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 平成 6年版 犯罪白書 第4編/第4章/第4節/2 

2 結  果

 (1)検察庁における処分状況
 IV-25図は,来日外国人事件及び日本人に係る事件の検察庁における処分別構成比を見たものである。起訴猶予率は,来日外国人事件では44.3%となっているのに対し,日本人に係る事件では30.9%となっている。一方,起訴人員に占める公判請求人員の比率は,来日外国人事件では61.1%となっているのに対し,日本人に係る事件では17.4%となっている。来日外国人事件については,起訴猶予率が,日本人に係る事件と比べて高くなっている反面,起訴人員に占める公判請求人員の比率が高くな4ている。また,日本人に係る事件においては,略式命令請求の比率が高くなっている。

IV-25図 来日外国人・日本人別の処分別構成比

 そこで,来日外国人事件につき,日本人事件と比較しつつ,処分にかかわる項目について見てみると,IV-12表のとおり,起訴・起訴猶予事件に関しては,来日外国人事件は,日本人事件と比べて,暴力団勢力等に関係がある者の占める比率や被疑者が飲酒していた事案等の比率が低く,被害者の抵抗がある事案等の比率が高くなっている。また,傷害の程度が1週間以下の事案が約3分の1を占め,さらに,犯行の手段として手足等を用いた事案も,その比率は日本人事件より低いものの,なお半数近くを占めている。一方,公判請求・略式命令請求事件に関しては,来日外国人事件は,日本人事件と比べて,傷害の程度が2週間を超える事案や,刀剣類・刃物を使用した事案の比率が高くなっている。このような事犯の実態の差異等により,来日外国人事件と日本人に係る事件との間で,起訴猶予率や起訴人員に占める公判請求人員の比率に差が生じているものと考えられる。

IV-12表 処分にかかわる項目への該当率の比較

 (2)裁判所における科刑状況
 IV-13表は,来日外国人事件及び日本人事件について,公判請求されて懲役刑の言渡しを受けた者の科刑状況を見たものである。来日外国人事件では,刑期が1年2月を超え1年6月以下の者が最も多く,次いで,1年6月を超え2年以下等となっているが,刑期が1年6月以下の者の合計数が,総数の約7割を占めている。

IV-13表 来日外国人・日本人別の懲役の科刑状況

 なお,来日外国人で,公判請求されて実刑に処された者は2人,執行猶予が付された者は31人であり,執行猶予率は93.9%となっている。これに対し,日本人に係る事件における執行猶予率は58.4%となっている。来日外国人事件については,執行猶予率が,日本人に係る事件に比べて高くなっている。
 IV-26図は,来日外国人事件及び日本人事件について,略式命令請求されて罰金刑に処された者の罰金額別構成比を見たものである。来日外国人事件,日本人事件共に,「10万円以下」の比率が最も高く,それぞれ約半数を占めている。

IV-26図 来日外国人・日本人別の罰金額別構成比

 (3)身柄状況等
 IV-27図は,来日外国人事件及び日本人事件について,検察庁における処分時の身柄状況を見たものである。

IV-27図 来日外国人・日本人別の身柄状況

 検察庁における処分時に逮捕・勾留中であった者の比率が,来日外国人事件では85.6%となっているのに対し,日本人事件では63.3%となっている。来日外国人事件については,逮捕・勾留中の者の占める比率が,日本人事件に比べて高くなっているが,これは,「住居不定・不詳」の者の占める比率が,日本人事件に比べて高くなっていることのほか,不法残留となっている者が多いこと,無職者の占める比率や,刀剣類・刃物・凶器を使用した悪質事案の占める比率が高いことなどから,「逃亡・罪証隠滅のおそれがある」と認められる者の比率が高くなったことによるものと思われる。
 IV-28図は,来日外国人事件及び日本人事件について,検察庁の処分時における供述状況を見たものである。来日外国人事件においては,「自白」の比率が75.3%となっており,その比率が,日本人事件に比べて低くなっている。
 なお,来日外国人97人の国籍は20か国にわたっており,その犯行時に不法残留となっていた者は46人(47.4%)で,これを含めて,来日外国人の過半数(50人,51.5%)に入管法違反が認められた。

IV-28図 来日外国人・日本人別の供述状況