前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
1 出入国管理に係る法制度 外国人(日本の国籍を有しない者をいう。以下同じ。)の入国,在留及び出国については,入管法(出入国管理及び難民認定法をいう。以下同じ。)がこれを規定している。
(1)外国人の出入国及び上陸 入管法上,外国人が我が国の領空・領海に入ることは「入国」,領土に足を踏み入れることは「上陸」,我が国の領域から出ることは「出国」として取り扱われる。IV-1図は,この出入国手続の流れの概要を示したものである。 外国人が上陸するに当たっては,査証を受けた旅券を所持した上,出入国港として定められた空港・海港において入国審査官に対し上陸の申請をし,入国審査官の上陸審査等において,上陸のための条件に適合するとの認定を受けて上陸許可を得なければならがい。 IV-1図 外国人の出入国手続の流れ 入管法は,上陸のための条件として,[1]旅券及び,査証を必要とする場合にはその査証が,いずれも有効であること,[2]申請に係る上陸後に行おうとする活動が虚偽のものではなく,在留資格に該当し,かつ,所定の基準に適合していること,[3]在留期間が法令の定めに適合していること,[4]上陸拒否事由に該当していないことを規定している。上陸拒否事由は,公衆衛生の保持,犯罪防止,公安及び国家利益の擁護等の見地から,我が国にとって好ましくない外国人の上陸を拒否する事由として定めているものであり,例えば,麻薬,大麻,あへん,覚せい剤若しくは向精神薬の取締りに関する法令に違反して刑に処されたことのある者又はこれら麻薬等の不法所持者や,売春又はその周旋・勧誘等に従事したことのある者がこれに該当する。なお,外国人が出国するには,出入国港において,入国審査官から出国の確認を受けなければならない。一定の事由がある場合は,出国の確認を受けるための手続がされた時から24時間に限り,出国確認が留保される。 (2)外国人の在留管理 入管法においては,外国人が我が国に在留中に行うことができる活動又は在留することができる身分・地位を類型化して「在留資格」として定め,これを中心に外国人の在留管理を行っている。 入管法に定める在留資格には,次の27種類がある。 [1] 外国人の行う活動に基づく在留資格 ア 定められた範囲内での就労が可能なもの 外交,公用,教授,芸術,宗教,報道,投資・経営,法律・会計業務,医療,研究,教育,技術,人文知識・国際業務,企業内転勤,興行,技能 イ 就労できないもの 文化活動,短期滞在,留学,就学,研修,家族滞在 ウ 活動の内容が個々に決定されるもの(その結果,一定の範囲で就労が認められることがある。) 特定活動 [2] 外国人の有する身分・地位に基づく在留資格(活動に制限がない。) 永住者,日本人の配偶者等,永住者の配偶者等,定住者 なお,いわゆる単純労働に従事することを目的とする外国人の入国を認めるための在留資格は,設けられていない。 在留期間は,これらの各在留資格に対応して法務省令で定められているが,外交,公用及び永住者の在留資格以外の在留資格に伴う在留期間は,3年を超えない範囲とされている。 在留資格と在留期間は,上陸許可の際に併せて決定され,所持する旅券にこれらを表示した上陸許可証印が押なつされる。外国人は,決定された在留資格と在留期間の範囲内で自由に活動することかできるが,その範囲を超えて報酬を受ける活動等をしあるいは滞在を継続すれば,退去強制手続の対象となり得る。在留資格の変更,資格外の就労活動,永住者への資格変更の必要がある場合にも,あらかじめ法務大臣にその旨を申請し,それぞれ,在留資格変更の許可,資格外活動の許可,永住許可を得なければならない。在留期間更新の必要がある場合にも,同様に在留期間更新の許可を得なければならない。これらの許可等に係る審査は,在留審査と呼ばれている。 (3)退去強制 不法に入国又は上陸した者,一度合法的に受け入れた外国人でも我が国にとって好ましくない行状のある者等について,これを強制的に国外へ退去させることを「退去強制」という。 入管法には,退去強制事由として次のような者が該当すると定めている。 [1] 不法入国者,不法上陸者,不法残留者又は資格外活動を専ら行う者等,出入国管理秩序に違反する者 [2] 外登法違反,麻薬取締法違反等,一定の犯罪を犯し刑罰に処された者や,売春・その周旋等,売春に直接関係がある業務に従事する者等の反社会的行為者 [3] 暴力的破壊活動者 [4] 法務大臣が,我が国の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者 IV-2図は,退去強制手続の流れの概要を示したものである。 退去強制手続は,入国警備官が,退去強制事由に該当すると思料される外国人を違反調査することに始まり,その容疑のある者に対する収容令書に基づく収容と入国審査官へあ引渡し,入国審査官による審査等を経て,退去強制事由に該当すると認定されると,退去強制令書に基づき送還されることになる。退去強制事由に該当しないと認定された場合は,放免される。 ところで,この退去強制手続は,刑事訴訟,刑の執行,少年院等の在院者の処遇に関する法令の規定による手続(以下「刑事手続」という。)とは別の行政手続であるが,不法入国,不法残留等の入管法70条所定の違反行為は,退去強制事由に該当するとともに,刑事罰則も適用されるところから,こ,れらの行為を行った者については,退去強制手続と刑事手続との関係が問題となる。入管法は,退去強制手続が刑事手続と独立して進行することを前提としつつ,退去強制令書の執行は,原則として,刑事手続が終了した後に行うものと定め,また,司法警察員が入管法70条所定の違反行為をした被疑者を逮捕したなどの場合は,一定の要件の下で被疑者を検察官に送致することの例外として入国警備官に引き渡す余地を認めることによって,両者の調整を図っている。 なお,検察官がこれらの被疑者を不起訴処分にする場合や,矯正施設の長が刑期の満了等により該当受刑者を釈放するなどの場合は,刑事手続から退去強制手続への移行を円滑にするため,収容令書等の呈示をまって,その身柄を入国警備官に引き渡さなければならないとされている。 IV-2図 退去強制手続の流れ |