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 平成 6年版 犯罪白書 第3編/第4章/第1節/1 

第4章 暴力団犯罪

第1節 概  説

1 暴力団対策法

 暴力追放の幅広い国民世論と厳しい取締りにもかかわらず,暴力団は,依然として根強くその勢力を維持し,市民生活に大きな不安を与え続けており,暴力団対策は当面の重要な課題であるところ,「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(以下,本章において「暴力団対策法」という。)が平成3年5月15日に公布,4年3月1日こ施行され,これを機に,暴力団を社会から追放しようという様々な活動が活発化した。さらに,暴力団の資金獲得につながる新たな暴力的要求行為の追加と,「指詰め」や少年に対する「入れ墨」の強要など組織からの離脱を妨げる行為の禁止を盛り込んだ暴力団対策法の一部改正法が5年5月12日に公布,同年8月1日から施行され,暴力団に対する規制の強化が図られた。
 警察庁刑事局の資料によると,暴力団対策法の施行後,平成4年中に,山口組,稲川会及び住吉会の警察庁重点対象暴力団をはじめとする15団体が,暴力団対策法の規定に基づき指定暴力団として指定された。5年には,新たに7団体が指定され,全暴力団構成員約5万2,900人の約82%が暴力団対策法の規制の対象となった。
 平成5年には610件の中止命令が発出され,4年の暴力団対策法施行以降発出された中止命令は851件に上っている。5年の中止命令を形態別に見ると,資金獲得活動である暴力的要求行為に対するものが335件(54.9%),脱退妨害・加入強要に対するものが263件(43.1%)である。団体別では,山口組に対するものが301件,稲川会に対するものが94件,住吉会に対するものが90件となっており,重点対象3団体に対する中止命令件数が全体の79.5%を占めている。なお,5年の再発防止命令の件数は35件である。
 暴力団の解散・壊滅は,平成2年には80組織(構成員数1,131人),3年には131組織(同1,430人),4年には158組織(同2,051人)となっている。暴力団対策法の成立,施行を契機とする警察の取締りの強化及び国民の暴力追放運動の盛り上がりによって暴力団の資金獲格活動が困難となったことなどにより,暴力団の解散・壊滅する数が増加している状況がうかがわれる。5年の暴力団の解散・壊滅は,222組織(同2,604人)であり,前年に比べ64組織(40.5%),構成員数にして553人(27.0%)増えている。