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1 覚せい剤事犯 III-1図は,覚せい剤事犯検挙人員の推移を見たものである。覚せい剤事犯は,昭和40年代後半から50年代後半にかけての急増傾向に歯止めが掛かったものの,依然として高い水準で推移している。平成5年における検挙人員は,1万5,495人で,前年と比べ184人(1.2%)の増加となっている。
平成5年における覚せい剤事犯検挙状況から見て特に注目される事犯の動向は,[1]覚せい剤に起因する事件・事故が多発していること,[2]暴力団が密売に深く関与していること,[3]30歳未満の若い年齢層への浸透が引き続き進んでいることの3点である。 III-1図 覚せい剤事犯検挙人員の推移 平成5年に覚せい剤に起因する犯罪により検挙された者は208人で,前年と比べ55人(35.9%)増加し,内容的にも暴行,傷害及び恐喝の粗暴犯が多くなっている。また,同年に覚せい剤に起因する事故を起こした者は,交通事故29人,濫用死18人,自殺7人等合計59人で,薬物濫用による死亡,交通事故等が多発している(警察庁生活安全局の資料による。)。平成5年における覚せい剤事犯検挙人員に占める暴力団勢力(暴力団の構成員及び準構成員)の比率は,42.0%であり,前年と比べ2.0ポイント低下しているものの,依然として高い水準にある。 なお,平成5年における交通関係業過,道交蓬反等交通犯罪を除く全犯罪で検挙された暴力団勢力3万3,970人のうち,覚せい剤事犯で検挙された暴力団勢力は18.8%を占めている(警察庁の統計による。)。 平成5年における覚せい剤事犯検挙人員を年齢層別に見ると,III-2図のとおり,20歳代の者が39.3%で最も多く,以下,30歳代の24.5%,40歳代の21.0%,50歳以上の8.9%,19歳以下の6.4%となっている。30歳未満の若い年齢層は7,074人で,前年と比べ293人(4.4%)増加している。 平成5年における覚せい剤事犯検挙人員を職業別に見ると,無職(主婦及び学生・生徒を含む。)は7,865人(51.6%)で過半数を占め,主婦及び学生・生徒の占める比率の高さが,引き続き注目されている。 なお,学生・生徒の検挙人員は,平成2年以降増加傾向を示し,5年には135人で前年と比べ23人(20.5%)増加している(警察庁生活安全局の資料による。)。 平成5年における女子の覚せい剤事犯検挙人員2,804人のうち,再犯者は,851人で30.3%を占め,男子の57.0%と比べて低いものの,かなりの数に上っている(警察庁生活安全局の資料による。)。 III-2図 覚せい剤事犯検挙人員の年齢層別構成比 国内で濫用されている覚せい剤は,そのほとんどが海外から密輸入されたものであるが,平成5年における覚せい剤1kg以上の大量押収事犯は,8件(押収量合計62.4kg。総押収量の64.9%に相当)であり,このうち6件に暴力団が関与している。これを供給地別に見ると,台湾1件(30.7kg),中国1件(20.6kg),供給地不明6件(11.1kg)となっている(警察庁生活安全局の資料による。)。覚せい剤1kg以上の大量押収事犯は,その供給地が不明なものが多く,年次による変化も大きいので,最近5年間の累計により供給地別押収量の構成比を見ると,III-3図のとおり,台湾が78.2%で圧倒的に高く,次いで,香港5.8%,韓国3.2%などとなっている。 平成5年における来日外国人による覚せい剤事犯検挙人員は288人で,前年と比べ12人(4.3%)の増加となっている。これを国籍別に見ると,フィリピンが209人(総数の72.6%)で圧倒的に多く,以下,韓国24人(同8.3%),台湾16人(同5.6%)などとなっている(警察庁生活安全局の資料による。)。 III-3図 覚せい剤密輸入の供給地別押収量構成比 |