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 平成 6年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2 

2 主要特別法犯の動向

 (1) 薬 物 関 係
 I-11図及びI-12図は,最近10年間における覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反,あへん法違反,大麻取締法違反及び毒劇法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。覚せい剤取締法違反は,近年減少傾向を示していたが,平成3年にやや増加し,4年,5年と3年連続で2万1,000件台を続けている。毒劇法違反は,昭和63年から平成3年までの間,覚せい剤取締法違反の受理人員を超えていたが,4年に大きく減少し,5年も引き続き減少した。大麻取締法違反は,近年増加傾向にあり,5年は前年と比べ556人(29.4%)の増加となった。麻薬取締法違反も増加しており,5年は前年と比べ17人(3.7%)の増加となった。あへん法違反は,昭和63年以降ほぼ横ばい状況にあったが,5年は前年と比べ41人(51.3%)増加した。

I-11図 覚せい剤取締法違反及び毒劇法違反の検察庁新規受理人員の推移

I-12図 大麻取締法違反・麻薬取締法違反及びあへん法違反の検察庁新規受理人員の推移

 警察庁の統計によって,平成5年の薬物関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員あ多いものから順に見ると,覚せい剤取締法違反では,使用,所持,譲渡,譲受,密輸入の順となっており,大麻取締法違反では,所持,譲渡,譲受,密輸入,栽培の順となっている。また,麻薬取締法違反では,所持,密輸入,譲渡,施用,譲受の順であり,あへん法違反では,栽培,所持,密輸入の順となっている。
 (2) 選 挙 関 係
 I-13図は,最近10年間における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。選挙関係事犯は,各年における選挙の有無・種類等によって受理人員に大きな変動があり,昭和59,61,62,平成2,3,5の各年の受理人員が多くなっている。受理人員の多い年を見ると,昭和61年7月にいわゆる衆参同時選挙が,62年4 月と平成3年4月に統一地方選挙が,昭和58年12月,平成2年2月及び5年 7月に衆議院議員総選挙がそれぞれ行われており,これらの選挙との関連が 深いことが分かる。一方,元年7月と4年7月に施行された参議院議員通常 選挙の年における受理人員は,いずれも少なくなっている。
 平成5年の受理人員は,前年と比べ5,537人(254.7%)の増加であった。
 警察庁の統計によって,平成5年の公職選挙法違反につき,違反態様別に送致人員の多いものを見ると,買収・利益誘導が圧倒的に多く,次いで,文書図画に関する制限違反,戸別訪問となっている。

I-13図 公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移

 (3) 風俗関係
 I-14図は,最近10年間における風 俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。風営適正化 法違反,売春防止法違反及び児童福祉法違反は,共に減少傾向にある。これ に対し,昭和62年まで減少傾向にあった公営競技取締法規違反(「競馬法違反」,「自転車競技法違反」及び「モーターボート競走法違反」をいう。)は, 近年増加傾向にあり,平成5年は,競馬法違反が前年と比べ364人(19.7%) の増加,モーターボート競走法違反は,前年と比べ100人(76.9%)の増加となっている。

I-14図 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 警察庁の統計によって,平成5年の風俗関係特別法犯につき,違反態様別に多いものを見ると,風営適正化法違反では,18歳未満の者を客に接する業務に従事させる行為,無許可営業,20歳未満の者に酒類又はたばこを提供する行為,売春防止法違反では,周旋等,勧誘等,売春をさせる契約が多いことが認められ,児童福祉法違反では,児童に淫行させる行為が大多数を占めている。
 (4) 保 安 関 係
 I-15図は,最近10年間における保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。保安関係事犯は,平成元年までいずれも減少傾向にあったが,軽犯罪法違反,酩酊防止法違反は,3年以降毎年増加している。銃刀法違反と火薬類取締法違反は,4年に増加したが,5年は前年を下回った。
 警察庁の統計によって,平成5年の保安関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,軽犯罪法違反では,はり札・標示物除去等,凶器携帯,窃視,田畑等侵入の順である。また,銃刀法違反では,刃物の携帯,けん銃等又は猟銃の不法所持,その他の銃砲又は刀剣類の不法所持の順であり,火薬類取締法違反では,所持,消費,貯蔵,譲渡・譲受の順となっている。

I-15図 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

I-16図 外事関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 (5) 外 事 関 係
 I-16図は,最近10年間における外登法違反及び入管法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。外国人の不法入国者及び不法在留者の急増に伴い,入管法違反が急激に増加している反面,外登法違反は著しく減少している。
 警察庁の統計によって,平成5年の外事関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,入管法違反では,不法残留,不法就労助長,旅券不携帯等の順となっている。外登法違反では,新規登録不申請が多数を占めている。
 (6) 労 働 関 係
 I-17図は,最近10年間における労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。労働安全衛生法違反は,平成2年をピークに以後減少しており,5年は前年と比べ90人(4.7%)の減少であった。労働基準法違反は,近年減少傾向にあったが,5年は前年と比べ306人(52.0%)の増加となった。職業安定法違反は,昭和60年代に大きく減少したが,平成2年以降は,ほぼ横ばい状態にある。労働者派遣法違反は,同法が施行された昭和61年以来増加傾向にある。船員法違反は,60年代に激減し,その後も減少傾向が続いたが,平成5年は前年と比べ16人(7.9%)増加した。

I-17図 労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

I-18図 環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 (7) 環 境 関 係
 I-18図は,最近10年間における環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。廃棄物処理法違反は,平成4年まで減少していたが,5年は,前年と比べ187人(9.8%)の増加となっている。海洋汚染防止法違反,水質汚濁防止法違反は引き続き減少傾向にある。なお,大気汚染防止法違反は5年においては受理がなく,自然公園法違反も前年と比べて減少した。
 (8) 条例違反及びその他の特別法犯
 I-19図は,最近10年間における条例違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成5年における条例違反の検察庁新規受理人員総数は,3,440人(前年比225人,7.0%増)で,その内訳は,青少年保護育成条例違反が1,814人(前年比160人,9.7%増),公安条例違反が14人(前年比4人,22.2%減),その他が1,612人となっている。
 なお,交通犯罪,財政経済犯罪等の本項で触れなかった特別法犯については,第3編「各種の犯罪と犯罪者」の各章及び巻末資料I-6表参照。

I-19図 条例違反の検察庁新規受理人員の推移