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 平成 5年版 犯罪白書 第3編/第1章/第2節/1 

1 保護処分対象少年の特性

 (1)非行名
 III-6表は,平成4年に新たに保護観察処分を受けた少年(交通短期保護観察少年を除く。以下「保護観察処分少年」という。)及び少年院新収容者について,処分を受ける原因となったそれぞれの本件非行名を見たものである。保護観察処分少年では交通事犯,少年院新収容者では財産犯の比率がそれぞれ高い。また,男女別に見ると,男子では交通事犯,財産犯の占める比率が高く,この二つで,保護観察処分少年の75.5%,少年院新収容者の56.8%を占めている。女子では保護観察処分少年にあっては交通事犯,少年院新収容者にあっては薬物事犯の比率がそれぞれ高い(巻末資料III-1表参照)。

III-6表 保護観察処分少年及び少年院新収容者の非行種類別構成比 (平成4年)

 (2)薬物等の使用歴及び不良集団関係
 III-7表は,平成4年における保護観察処分少年と少年院新収容者について,薬物等の使用歴及び不良集団関係を見たものである。本件非行が薬物事犯であった保護観察処分少年及び少年院新収容者の,それぞれの総数に占める比率が9.7%,14.3%であるにもかかわらず,薬物等の使用経験をもつ者は,保護観察処分少年では29.3%,少年院新収容者では48.1%に上る。保護観察処分少年,少年院新収容者共に,女子の薬物等の使用経験率が男子より高いのが注目される。次に,不良集団関係を見ると,保護観察処分少年では「なし」とする者が61.3%,少年院新収容者では,逆に「あり」とする者が60.2%を占めている。

III-7表 保護観察処分少年及び少年院新収容者の薬物等使用歴及び不良集団関係 (平成4年)

 (3)保護処分歴等
 III-8図は,平成4年における保護観察処分少年と少年院新収容者について,保護処分歴等を見たものである。保護観察処分少年,少年院新収容者共に,男子の方が女子より保護処分歴を有する者の比率が高い。前節で見たとおり,平成3年における一般保護少年の前処分歴「なし」の比率は68.5%であり,それに比べると,保護観察処分少年,少年院新収容者共に,処分歴のある者の占める比率が著しく高い。

III‐8図 保護観察処分少年及び少年院新収容者の保護処分歴等別構成比 (平成4年)

 (4)生活程度
 III-9図は,保護者の生活程度を見たものである。少年院新収容者の保護者は,保護観察処分少年のそれと比較して,貧困な生活状態にある者の比率が高い。

III-9図 保護観察処分少年及び少年院新収容者の保護者の生活程度別構成比 (平成4年)

 (5)教育程度
 III-10図は,平成4年における保護観察処分少年と少年院新収容者の教育程度を見たものである。少年院新収容者では半数を超える58.8%の者が中学校卒業の学歴となっている。

III-10図 保護観察処分少年及び少年院新収容者の教育程度別構成比 (平成4年)

 (6)職業生活
 III-11図は,昭和58年から平成4年までの10年間における保護観察処分少年と少年院収容少年の学職別構成比を見たものであるが,10年間の動向には大きな変動はなく,無職者が,保護観察処分少年ではほぼ2割であるのに対して,少年院新収容者ではほぼ5割となっている。平成4年における,交通関係業過を除く刑法犯検挙少年に占める無職者の比率は11.0%であり,それに比べると,保護観察処分少年や少年院新収容者では共に,無職者の占める比率が高いことが注目される。

III-11図 保護観察処分少年及び少年院新収容者の学職別構成比の推移 (昭和58年〜平成4年)

 (7)その他の特性
 法務総合研究所が,保護処分対象少年の特性に関する調査を,全国の保護観察所と少年院に対して実施した結果は,以下のとおりである。なお,これらの調査対象者は,平成3年12月2日現在,全国の保護観察所に保護観察処分少年として係属している者のうち,交通事犯による者を除いた男子527人,女子507人,計1,034人(以下「観察少年」という。)と,3年11月308現在,全国の少年院在院者のうち種別,処遇区分をほぼ同じくする男子546人,女子401人の計947人(以下「収容少年」という。)である。
ア 居住状況
 III-12図は,観察少年,収容少年別に本件非行時の居住状況を見たものである。家族と同居する者の比率は,男女共に,観察少年が収容少年よりも高い。女子の収容少年では,家族と同居の者が半数に満たず,同せい,浮浪・住所不定の少年が約3割を占めている。
イ 保護者の状況
 III-13図は保護者別構成比を見たものである。実父母のいる比率は,男女共に,観察少年の方が収容少年よりも高い。
ウ 観察少年の家庭環境
 III-14図は,保護観察官が評定(複数選択)した,観察少年の家庭環境上の問題点を見たものである。家庭の問題が「なし」とされた者は,極めて少なく,大部分の家庭が何らかの問題を抱えている。男女共に,「指導力不足」が半数以上の者に挙げられており,次いで,男子では「しつけ不足」,「意思疎通不足」,女子では「父母離婚」,「しつけ不足」と続いている。
エ 収容少年の初発非行年齢
 III-15図は,収容少年について,初発非行年齢(初めて補導・検挙された時の年齢)を男女別に示したものである。中学校入学前に補導・検挙を経験している者も少なからず認められるが,ピークは男子で13歳,女子で14歳となっている。14歳までに初発非行が見られた者は,男子73.1%,女子57.1%であり,男子の方が女子より早期に非行が始まる傾向にある。

III-12図 観察少年・収容少年別に見た本件非行時の居住状況別構成比

III-13図 観察少年・収容少年別に見た保護者別構成比

III-14図 観察少年の本件非行時における家庭環境上の問題点

III-15図 収容少年の初発非行年齢別構成比