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 平成 4年版 犯罪白書 第4編/第3章/第5節/3 

3 女子少年の保護観察

 本項においては,女子少年の保護観察対象者として女子保護観察処分少年及び女子少年院仮退院者を取り上げ,その動向及び保護観察の実施結果を男子少年と対比してみることとする。なお,両対象者には,保護観察の新規受理時点において既に成人であった者が若干含まれている。
(1) 保護観察対象者の動向
ア 新規受理人員と年齢
 IV-33表は,昭和41年以降5年ごとに新規受理人員の男女・年齢層別構成比及び新規受理人員総数に対する女子比を示したものである。まず,新規受理人員を見ると,保護観察処分少年,少年院仮退院者の各総数は,少年非行の推移を反映して,40年代での減少,50年代での増加,60年以降での減少といった傾向を示している。一方,女子比を見ると,61年までは,少年院仮退院者の方が高かったが,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に上昇する傾向にある中で,保護観察処分少年においてその傾向が著しいために,平成3年には,これが逆転して保護観察処分少年の方が高くなっている。
 次いで,年齢層別構成比を見ると,女子は,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,どの年次においても,17歳以下の年少・中間少年の占める比率が男子よりも高い。また,年齢層別構成比の推移を見ると,保護観察処分少年,少年院仮退院者の男女共に,17歳以下の者の占める比率が昭和50年代において上昇する傾向が見られ,特に女子少年院仮退院者においてその程度が著しかったが,最近では,その傾向が弱まっている。

IV-33表 少年の新規受理保護観察対象者の男女・年齢層別構成比及び女子比

イ 非行名
 IV-34表は,昭和41年以降5年ごとに新規受理人員の男女・非行名別構成比を高い順に第1位から第5位まで示したものである。保護勘察処分少年について見ると,男子では46年以降,第1位が道路交通法違反,第2位が窃盗,第3位が業過と,第3位までの非行名が固定しているのに対し,女子では非行名の順位に大きな変動が見られ,特に毒劇法違反の上昇が顕著である。
 なお,女子における構成比の推移を見ると,毒劇法違反,道路交通法違反,業過などが上昇し,虞犯,窃盗,売春防止法違反などが低下している。
 次いで,少年院仮退院者について見ると,昭和41年以降,男子では窃盗が,女子では虞犯が,それぞれ一貫して第1位を占めており,また,第2位は,男子では恐喝から強姦,傷害,道路交通法違反へと変化しているのに対し,女子では窃盗から覚せい剤取締法違反へと変化している。
 なお,女子における構成比の推移を見ると,毒劇法違反などが上昇し,窃盗,虞犯,売春防止法違反などが低下している。
ウ 薬物等使用と不良集団
 IV-35表は,平成3年における新規受理人員について,薬物等使用歴の有無及び不良集団関係の有無を示したものである。まず,薬物等使用歴の有無を見ると,「あり」とされる者の比率は,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,女子が男子に比べて格段に高い。特に女子少年院仮退院者においては8割以上に達していることが注目される。また,薬物等の種類別で見ると,保護観察処分少年,少年院仮退院者の男女共に,シンナー ・ボンド・トルエン等の比率が最も高いことが分かるが,このほか,女子少年院仮退院者においては覚せい剤が3割を超えていることが注目される。
 次いで,不良集団関係の有無を見ると,「あり」とされる者の比率は,保護観察処分少年では,男女間にほとんど差異が見られないが,少年院仮退院者では,女子が男子に比べて低い。また,不良集団を種類別に見ると,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,男子では暴走族が,女子では地域不良集団が,それぞれ比率が最も高いことが分かるが,このほか,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,暴力組織や不良生徒,学生集団の各比率が女子において男子よりも若干高いことが注目される。
(2) 保護観察の実施結果
ア 保護観察中における再犯率
 IV-26図は,昭和54年以降に保護観察を終了した人員について,保護観察期間中における再犯率の推移を示したものである。これによると,再犯率は,保護観察処分少年,少年院仮退院者の男女共に,59年ないし61年をピークとしてほぼ低下する傾向にあって,どの年次においても,女子が男子に比べて低い。

IV-34表 少年の新規受理保護観察対象者における構成比の高い非行名

IV-35表 少年の新規受理保護観察対象者の男女別薬物等使用歴の有無及び不良集団関係の有無

IV-26図 少年の保護観察終了者の男女別再犯率の推移

イ 保護観察終了時における成績良好率
 IV-27図は,昭和54年以降に保護観察を終了した人員について,保護観察終了時における成績良好率の推移を示したものである。これによると,成績良好率は,保護観察処分少年,少年院仮退院者の男女共に,全体的にほぼ横ばい傾向にあって,保護観察処分少年における54年を除くと,女子が男子に比べて高い。また,少年院仮退院者は,保護観察処分少年に比べて男女間の成績の差が大きかったが,最近では女子が若干低下するとともに男子が若干上昇しているために,その差が縮小している。

IV-27図 少年の保護観察終了者の男女別成績良好率の推移