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3 覚せい剤取締法違反 覚せい剤取締法違反の法定刑の種類は,無期懲役,有期懲役及び罰金であるが,近年における同法違反事件の起訴事例を見ると,略式命令請求をした例は皆無に近くなっており,ほとんど全件公判請求をしている。
覚せい剤取締法違反の公判請求人員(ここでは,起訴人員を公判請求人員とみなす。),起訴猶予人員及び公判請求率(ここでは,起訴率を公判請求率とみなす。)を昭和54年以降について男女別に見ると,IV-19表のとおりであり,窃盗及び詐欺と異なり,公判請求率は男女ともに極めて高いが,それでも,窃盗及び詐欺と同様,女子の公判請求率は男子より低い。 そこでさらに,被疑者調査票に基づく調査により,男女別に,5歳刻みの年齢層別に最近の5年間における公判請求人員と起訴猶予人員とをそれぞれ合計し,年齢層別平均公判請求率を求めると,IV-11図のとおりであり,窃盗と異なり,男女共に年齢層による差はほとんどない。検察官の薬物事犯に対する厳正な処理方針の現れであろう。 IV-18表 業務上過失致死傷の男女別有罪・実刑人員,実刑率及び実刑判決の平均刑期 IV-19表 覚せい剤取締法違反の男女別公判請求・起訴猶予人員及び公判請求率 IV-20表 覚せい剤取締法違反の男女別有罪・実刑人員,実刑率及び実刑判決の平均刑期 IV-11図 覚せい剤取締法違反の男女・年齢層別平均公判請求率 最高裁判所の資料により,昭和54年から平成2年までの間に,第一審裁判所において,覚せい剤取締法違反により有罪とされ有期懲役刑を言い渡された人員,うち,実刑を言い渡された人員,実刑率,及び実刑判決の平均刑期を男女別に見ると,IV-20表のとおりであり,女子は,実刑率において男子より低く,実刑判決の平均刑期においても,男子より短い。これは恐らく,女子の覚せい剤事犯者の中には,男子の覚せい剤事犯者に誘われて覚せい剤を使用するに至る者など,犯行態様が受動的な者がいることが一つの要因になっているものと考えられる。そこでさらに,男女別に,5歳刻みの年齢層別に昭和61年から平成2年までの5年間における有罪人員,実刑人員及び実刑判決の刑期をそれぞれ合計し,年齢層別に平均実刑率及び平均刑期を求めると,IV-12図のとおりであり,男女とも,50歳代後半から実刑率が低下するが,実刑判決の平均刑期は,20歳代,30歳代に比べると,長くなっている。IV-13図は,同じ期間における起訴人員の平均実刑前科者率を,男女別に見たものである。両図から,女子の50歳代後半からの実刑率の低下は,実刑前科者率の低下を反映するものと思われる。また,50歳以上の高年齢者の平均刑期が図の上で横ばい状態であるのは,実刑に処せられた高年齢者の犯罪性に変化がないことを示唆するものである。 IV-12図 覚せい剤取締法違反の男女・年齢層別平均実刑率及び実刑判決の平均刑期 IV-13図 覚せい剤取締法違反の男女・年齢層別平均実刑前科者率 |