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2 保護観察処遇の状況 (1) 保護観察官と保護司の協働態勢
保護観察を行う機関は保護観察所であるが,平成3年12月31日現在,全国には,本庁50庁,支部3庁のほか,27か所に駐在官事務所が設けられている。 対象者の処遇は,原則として,保護観察官及び保護司の協働態勢によって行われている。保護観察官には,更生保護に関する関係諸科学に基づく専門的知識による活動が,また,法務大臣から委嘱を受けた民間篤志家である保護司には,地域性,民間性等を生かした活動が要請されている。 保護観察処遇の実際は,保護観察官が,保護観察開始当初において,関係記録や本人との面接から得た資料等に基づき,保護観察実施上の問題点等を明らかにして,処遇計画を立て,これに沿って,主に保護司が本人との面接等により直接的な指導・援助を行っている。処遇の経過は,毎月保護司から保護観察所に報告され,保護観察官は,保護司と連携を保ちつつ,適時本人と面接をするなど,状況の変化に即応した処遇上の措置を講じている。 保護司は,保護司法によって,人格及び行動について社会的な信望があること,職務の遂行に必要な熱意と時間的余裕があることなどの資格要件が定められており,また,守秘義務などの責任が課されている。保護司には給与が支給されず,職務に要した費用の全部又は一部が実費弁償金として支給されている。保護司の定数は,同法によって,5万2,500人を超えないものと定められているが,実人員は,平成3年12月31日現在において,4万8,836人であり,女性保護司の占める割合は21.2%となっている。同日現在の経験年数では,2年未満の保護司が10.9%,2年以上10年未満の者が41.5%で,10年以上の経験を有する保護司は47.6%と約半数を占めている。 保護司の処遇能力を高めるため,保護観察所においては,保護司に対する各種の研修を定期的,計画的に実施している。平成3年度(会計年度)においては,初めて保護司になった者に対する新任研修が131回(受講者3,156人),経験年数2年未満の者に対する第1次研修が58回(同2,506人),例えばシンナー濫用対象者等処遇上特別な配慮を必要とする対象者に関する特別研修が388回(同2万1,782人),経験年数に関係なく,原則として保護区ごとに行われる地域別定例研修が4,040回(同延べ人員12万5,417人)実施されている。保護司には,アジア極東犯罪防止研修所(通称「アジ研」)の国際研修に参加する機会もあり,保護司の視野拡大に寄与している。 (2) 分類処遇及び類型別処遇並びに定期駐在 資質,環境に問題の多い対象者に対して,保護観察処遇を積極的に実施するための施策として,分類処遇及び類型別処遇並びに保護観察官の定期駐在が行われている。 まず,分類処遇は,交通事件(本節では,交通関係業過,道交違反並びに道路運送法,道路運送車両法及び自動車損害賠償保障法の各違反をいう。)を除く対象者について,処遇の難易に応じて,A,Bの2段階に分類し,問題が多く処遇が困難であると予測されるA分類の者に対しては,保護観察官による処遇を計画的,積極的に行おうとするものである。平成3年末現在においてAに分類されている者の比率は,それぞれ保護観察処分少年が6.6%,少年院仮退院者が33.6%,仮出獄者が19.8%,保護観察付執行猶予者が8.8%となっている。 次に,類型別処遇は,昭和51年から仮釈放審理の充実と保護観察の実効を期するために行われてきた犯罪・非行の態様等による類型別把握の方法を発展させ,平成2年5月1日から実施されている施策である。これは,シンナー等濫用対象者,覚せい剤事犯対象者など,保護観察対象者のもつ問題性その他の特性を,その犯罪・非行の態様,環境条件等によって類型化した上,各類型ごとに具体的な処遇指針を例示し,その特性に焦点を合わせた処遇を実施し,分類処遇とは別の角度から処遇を充実させようとするものである。 なお,通常の個別処遇に加えて,シンナー等濫用など保護観察対象者の問題特性に応じた集団処遇を実施している保護観察所が少なくなく,平成3年には,全国で,各種合わせて412回(実施人員4,357人)の集団処遇が実施されている。 定期駐在は,あらかじめ定めた場所に保護観察官が毎週あるいは毎月定期的に出張し,対象者及びその家族等関係者との面接による指導や助言,保護司との連絡協議等の業務を積極的,効率的に実施するためのものであるが,平成3年には,全国で6,394回の定期駐在が実施され,総計4万9,335人に面接して,指導,助言等が行われている。 (3) 援助の措置 保護観察に付されている者が,傷病のため,又は適当な住居や職業がないため,その更生が妨げられるおそれがある場合は,保護観察官又は保護司は,公共の衛生福祉等の機関から必要な援助が得られるように助言,指導等を行っているが,その援助が直ちに得られない場合,又は得られた援助だけでは十分でないと認められる場合は,保護観察所において,応急の援助を行っている。これには,保護観察所が自ら行う食事・衣料の給与,医療の援助,帰住旅費の支給等のほか,更生保護会等に委託して行う宿泊保護がある。 平成3年においてなされたこれらの援助措置の実施状況は,II-57表のとおりである。 II-57表 援助措置の実施人員 (4) 成績良好者に対する措置保護観察の結果,行状が安定し,再犯のおそれがなくなったと認められる者に対して採られる措置(良好措置)は,対象者の種類によって異なる。保護観察処分少年については,保護観察を終了させる「解除」又は保護観察を一時停止する「良好停止」があり,少年院仮退院者については,保護観察を終了させる「退院」があり,刑の短期を経過した不定期刑仮出獄者については,刑の執行を受け終わったものとする「不定期刑終了」があり,保護観察付執行猶予者については,保護観察を仮に解除する「仮解除」がある。 平成3年中に採られた良好措置を見ると,解除の措置を受けた保護観察処分少年は6万6,610人(うち,交通短期保護観察少年4万9,504人),退院の措置を受けた少年院仮退院者は808人,不定期刑終了の措置を受けた仮出獄者は1人,仮解除の措置を受けた保護観察付執行猶予者は1,190人である。これを前年に比べると,保護観察処分少年に関する措置及び退院の措置はやや増加しているが,仮解除の措置は,やや減少している。 (5) 成績不良者に対する措置 保護観察に付されている者が,遵守事項に違反した場合又は再犯した場合などに採られる措置(不良措置)も,対象者の種類によって異なる。保護観察処分少年については,新たな処分を求めるための家庭裁判所への「通告」があり,少年院仮退院者については,少年院に再収容する「戻し収容」があり,仮出獄者については,所在不明になった者に対してその所在が明らかになるまで刑期の進行を止める「保護観察の停止」及び行刑施設へ再収容する「仮出獄の取消し」があり,保護観察付執行猶予者については,「刑の執行猶予の取消し」があり,婦人補導院仮退院者については,婦人補導院に再収容する「仮退院の取消し」がある。平成3年中に採られた不良措置を見ると,家庭裁判所へ通告された保護観察処分少年は58人,少年院に戻し収容された少年院仮退院者は15人,仮出獄者で保護観察を停止された者は857人,仮出獄を取り消された者は979人,刑の執行猶予を取り消された保護観察付執行猶予者は1,368人である。 なお,対象者が,一定の住居に居住しない場合,遵守事項に違反したと疑うに足りる十分な理由があって,保護観察所長の呼出しに応じないなどの場合には,裁判官の発する引致状により「引致」を行い,さらに,必要に応じて,一定の期間,所定の施設に「留置」する措置が採られる。平成3年において引致された者は334人(前年は320人),留置された者は245人(同237人)である。 |