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 平成 3年版 犯罪白書 第3編/第2章/第6節/1 

第6節 少年の更生保護

1 少年の保護観察

(1) 概  況
 少年として保護観察の対象となるのは,少年法24条1項1号に基づき家庭゜裁判所の決定により保護観察に付された者,少年院からの仮退院を許可された者,少年刑務所からの仮出獄者及び少年の保護観察付執行猶予者である(保護観察全般については第2編第4章第2節参照)。
 平成2年において保護観察所が新たに受理した保護観察対象者は,前掲II48表のとおりであり,保護観察処分少年は7万3,779人(前年比4.9%増),少年院仮退院者は4,333人(同6.1%減),少年刑務所からの仮出獄者は4人,少年の保護観察付執行猶予者は72人である。
 昭和63年以降において新たに受理した少年の保護観察対象者を,保護観察処分少年については一般事件及び交通事件(本節では,交通関係業過,道交違反並びに道路運送法,道路運送車両法及び自動車損害賠償保障法の各違反をいう。)に,また,少年院仮退院者については刑法犯,特別法犯及び虞犯にそれぞれ分けた上,非行の種類別に示すと,III-47表のとおりである。保護観察処分少年では,一般事件が減少傾向にあるのに対し,交通事件は増加傾向にある。また,少年院仮退院者では,刑法犯,特別法犯,虞犯共に減少傾向にある。

III-47表 保護観察対象者の非行種類別受理人員(昭和63年〜平成2年)

 III-48表は,交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年について,その保護処分歴等を見たものである。平成2年では,何らかの保護処分歴(審判不開始及び不処分を含まない。)のある者が23.9%となっている。
 平成2年の受理時における保護観察処分少年と少年院仮退院者の年齢は,前掲II-50表のとおりである。15歳以下の年少少年の占める割合は,保護観察処分少年で10.0%,少年院仮退院者で8.0%となっている。なお,受理時において中学在学中である少年は,保護観察処分少年と少年院仮退院者とを合わせて,元年は1,538人であったが,2年は1,276人となり,前年に比べて減少している。

III-48表 保護観察処分少年の保護処分歴等別受理人員(昭和63年〜平成2年)

(2) 保護観察の実施状況
 保護観察所では,平成2年5月1日から実施されている類型別処遇を積極的に進めているが,特に,少年に対しては無職等少年対象者,中学在学対象者及び校内暴力対象者等の類型を設定した上で,各類型ごとに具体的な処遇指針を例示し,その特性に焦点を当てた各種処遇技法を開発・適用するなどして,保護観察処分少年と少年院仮退院者に対する効果的な処遇を展開している。
 III-49表は,平成2年12月31日現在における交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,保護観察対象者の類型別人員を示したものである。保護観察処分少年及び少年院仮退院者のいずれにおいても,シンナー等濫用対象者の占める比率が高い。保護観察所では,これらシンナー等濫用対象者に対し,通常の個別処遇に加えて集団処遇を実施しており,2年には,29庁の保護観察所において,計58回開催された。

III-49表 保護観察対象者の類型別人員(平成2年12月31日現在)

 平成2年に保護観察を終了した交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年及び少年院仮退院者の状況は,前掲II-53表のとおりであり,最近3年間における保護観察対象少年の保護観察終了状況について,保護観察処分少年を一般事件と交通事件とに,少年院仮退院者を長期処遇と短期処遇とに分けて見たものが,III-50表である。

III-50表 少年の保護観察の終了状況(昭和63年〜平成2年)

 平成2年に保護観察を終了した保護観察処分少年のうち,経過が良好で保護観察を解除された者の占める割合は,一般事件で57.3%,交通事件で86.1%である。また,再犯・再非行を犯すなどして新たに保護処分又は刑事処分を受け,家庭裁判所の決定により従前の保護観察処分が取り消された者の割合は,一般事件で16.0%,交通事件で5.2%である。
 一方,平成2年に保護観察を終了した少年院仮退院者のうち,経過が良好であるため退院申請を行い,地方更生保護委員会の決定により,いわゆる本退院とされた者(第2編第4章第2節2(4)参照)の割合は,長期処遇で10.7%,短期処遇で26.9%である。また,経過が不良のため,地方更生保護委員会の申請に基づく家庭裁判所の決定により,少年院へ戻し収容の措置が採られた者及び再非行等を理由に新たな処分を受けたことによって保護処分が取り消され,少年院へ送致されるなどした者の合計が占める割合は,長期処遇で20.5%,短期処遇で17.1%である。
 III-51表は,平成2年における保護観察の終了状況を,保護観察の実施期間別に示したものである。解除により保護観察が終了した保護観察処分少年の解除までの期間は,1年以内のもので見ると,一般事件で5.7%,交通事件で80.4%であり,交通事件の方が早く解除になっている,また,少年院仮退院者のうち,仮退院期間中にいわゆる本退院となった者の本退院までの期間は,1年以内のもので見ると,長期処遇を受けていた少年で18.4%,短期処遇を受けていた少年で50.4%であり,短期処遇を受けていた少年の方が早く本退院になっている。
(3) 交通短期保護観察
 交通関係業過や道交違反で保護観察処分の決定を受けた少年のうち,家庭裁判所により短期の保護観察が相当である旨の処遇勧告がなされた者に対しては,原則として,保護観察官による集団処遇を中心とした特別な処遇を短期間のうちに実施することを目的とする交通短期保護観察が行われている。
 これは,安全運転に関する討議を中心とした集団処遇と,少年から毎月1回生活状況に関する報告を行わせることとを主な内容とするものであるが,保護観察開始後3か月以上4か月以内に,車両の運転による再犯がなく,集団処遇に出席し,生活状況に関する報告を行い,かつ,少年の更生上特に支障がなければ,当該保護観察は解除される。なお,6か月を超えても解除できない状態にある者に対しては,当該保護観察処分の決定をした家庭裁判所の意見を聴いて,交通関係業過や道交違反で通常の保護観察処分に付された者と同様の処遇が行われる。

III-51表 少年の保護観察の実施期間別終了状況(平成2年)

 III-52表は,最近3年間における交通短期保護観察の受理・終了状況を示したものである。交通短期保護観察少年の受理人員は,毎年増加を続けてきたが,昭和62年4月に道路交通法の一部が改正され,反則通告制度の適用範囲が拡大されたので,63年は前年より減少したが,平成元年からは,再び増加している。

III-52表 交通短期保護観察少年の受理・終了状況(昭和63年〜平成2年)

III-53表 交通短期保護観察少年に対する集団処遇実施状況(昭和63年〜平成2年)

 最近3年間に実施した集団処遇の回数,参加延べ人員及び1回当たりの参加人員は,III-53表のとおりである。