前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 3年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/4 

4 収容鑑別対象少年の特性

 平成2年に収容鑑別の対象となった少年1万7,045人(男子1万4,540人,女子2,505人)について,幾つかの側面からその特性を見ると,次のとおりである。
(1) 非行名及び年齢層
 III-13図は,平成2年における収容鑑別対象少年の非行名の構成比を男女別に見たものである。非行名で最も多いのは,総数では,窃盗であり,次いで,道路交通法違反,虞犯,傷害,毒物及び劇物取締法違反の順で続いている。男女別に見ると,女子の構成比は男子と異なり,虞犯が44.0%を占めて最も多く,第2位の窃盗は14.4%にすぎない。また,毒物及び劇物取締法違反及び覚せい剤取締法違反の構成比において,女子は男子よりも高くなっている。

III-13図 収容鑑別対象少年の男女・非行名別構成比(平成2年)

III-33表収容鑑別対象少年の男女・年齢層・非行名別人員(平成2年)

 構成比で昭和62年以降上昇傾向を示しているのは毒物及び劇物取締法違反で,特に女子においてこの傾向が著しい。また,男子における道路交通法違反の構成比が2年連続して上昇している。
 III-33表は,平成2年における収容鑑別対象少年の非行名を,男女別及び年齢層別に見たものである。年齢層を見ると,総数では,年長少年(本節では20歳以上の者を含む。)が43.9%を占めて最も多く,次いで,中間少年が39.3%,年少少年(本節では14歳未満の者を含む。)が16.7%の順となっている。
 年齢層と非行名との関係を見ると,男子の場合,いずれの年齢層においても窃盗が30%台で最も多いが,次いで,年少少年では虞犯及び傷害が,中間少年及び年長少年では道路交通法違反が多い。一方,女子の場合は,年少少年及び中間少年,特に前者で虞犯が多く,中間少年では毒物及び劇物取締法違反などの構成比が高くなる。また,女子の年長少年では,覚せい剤取締法違反と窃盗の構成比が上昇し,虞犯の構成比が低下する。
(2) 前歴及び問題行動等
 III-34表は,収容鑑別対象少年の前歴等及び不良集団関係を昭和63年以降の3年間について見たものである。少年鑑別所への入所回数を見ると,再入者(2回以上入所した者)の比率は,この3年間で漸減傾向にある。非行時の身上(継続している保護処分等の有無及び種類)を見ると,非行時に何らかの処分等を受けていた者の比率も漸減している。女子は男子に比べて,少年鑑別所再入者や保護処分等に付されていた者の比率は低く,保護処分等のうち,試験観察に付されていた者の比率は高くなっている。保護処分等が継続していた者の比率は,毒物及び劇物取締法違反(45.1%),窃盗(38.6%)などを犯した者において高い。
 不良集団関係を見ると,男子が5割強,女子が4割強に不良集団関係があり,暴走族に関係する者が増加傾向にある。

III-34表 収容鑑別対象少年の前歴等及び不良集団関係の構成比(昭和63年〜平成2年)

III-35表 収容鑑別終了少年における各種問題行動の経験者の比率(昭和63年〜平成2年)

 III-35表は,収容鑑別終了少年における各種問題行動の経験者の比率を男女別に見たものである。女子の無免許運転経験者の比率は,昭和53年には9.1%にすぎなかったものが逐年上昇し,平成2年には5割近くにまで達している。
(3) 資質,教育程度及び家庭の状況
 III-14図は,平成2年における収容鑑別対象少年の知能指数,教育程度及び保護者の状況を見たものである。知能指数を見ると,男子に比べ女子の方が低いことが分かる。なお,精神診断の結果が明らかになった1万6,732人のうち,精神障害の認められた者は,343人(2.0%)であり,内訳は,精神薄弱185人,神経症14人,精神病質11人,その他の精神障害133人となっている。非行時の教育程度を見ると,総数では,中学校卒業の者が最も多く,高校中退者がこれに次いでいる。中学校卒業及び高校進学以上など,学齢を超えたことが明らかな者1万4,872人のうち,高校に入学した経験のある者は6,572人(44.2%)であるが,このうち73.6%の者が高校を中退している。

III-14図 収容鑑別対象少年の知能指数,教育程度及び保護者(平成2年)

 保護者の状況を見ると,男子では,保護者が実父母である者は5割を少し超える程度であるが,女子では半数を割っており,実母のみ,義父実母など,実父を欠いている者の比率が男子に比べて高い。なお,家庭の生活程度が明らかになったものは1万6,712人であり,その内訳は,「富裕」2.1%,「普通」78.0%,「貧困」19.8%となっているが,「貧困」の家庭の比率は,昭和60年の26.8%から漸減傾向にある。