前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第5章/第6節/2 

2 処遇の概要

 少年刑務所においては,少年受刑者のほかに,26歳未満の青年受刑者をも収容し,処遇集団を編成することにより,処遇の充実を期している。青少年受刑者の処遇については,特に職業訓練,教科教育及び生活指導に重点が置かれている。なお,これらの実施に当たっては,地域社会の人々からも多くの協力を受けている。
 職業訓練は,出所後の自立更生に資することを目的として,特に積極的に実施されている。職業訓練の種目は,溶接科,自動車整備科,電気工事科,理容科,ボイラー運転科等多種にわたり,多くの者が,公認の資格・免許を取得し,又は職業的技能を習得して,出所後の就職に役立てている。特に,川越,奈良,佐賀及び函館の各少年刑務所は,全国から適格者を集めて訓練を実施する総合職業訓練施設に指定されており,これらの施設において年間1,600時間以上の訓練を修了した者に対しては,労働省職業能力開発局長名の職業訓練履修証明書が発行されている。
 職業訓練のうち特色あるものとして,函館少年刑務所では,船舶職員科の訓練が行われている。これは,船舶職員としての公的免許を取得させることを目指して昭和33年に開設され,平成元年度(会計年度)末である2年3月までの32年間に398人の海技従事者を社会に送り出した。この訓練に使用されている練習船・少年北海丸は,総トン数91トンである。
 教科教育は,活発に実施されており,特に松本少年刑務所では,昭和30年4月から地元公立中学校の分校を設け,全国から義務教育未修了者のうち適格者を集めて入学させ,修了者には本校の校長から卒業証書が授与されている。平成元年度(会計年度)には,7人に卒業証書が授与された。分校創立以来,元年度(会計年度)末である2年3月までの35年間に卒業証書を授与された者の総数は512人である。また,松本,奈良及び盛岡の各少年刑務所では,地元県立高等学校の協力を得て高等学校の通信制課程の受講を実施しており,元年度(会計年度)には,11人が卒業証書を授与されている。元年度(会計年度)末である2年3月までに卒業証書を授与された者は,松本少年刑務所では45人(昭和45年以降),奈良少年刑務所では51人(50年以降),盛岡少年刑務所では36人(51年以降)で,合わせて132人である。このほか,社会通信教育及び学校通信教育も,希望者に対し実施されている。
 生活指導は,青年期の特性を十分に考慮して,健全な心身を培い,自律心及び遵法精神をかん養し,健全な社会生活を送るために必要な知識及び生活態度を身につけさせることを目的として,入所時教育や出所時教育のほか,進路指導,読書指導,集会,施設外教育,体育活動,クラブ活動等が計画的に実施されており,受刑者の参加意欲にも高いものがある。