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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第4章/第4節/1 

第4節 価値観等

1 価値観

 本節では,人々が日常生活を送る中でもっている様々な意見,人の暮らし方についての意見,迷惑目撃事態での判断,非行化原因と非行少年処遇についての意見などを手掛かりに非行少年と一般少年を比較することとする。
 まず,日常生活においてもつ意見で比較的重要と考えられるものを16項目取り上げ,「あなたは,次の意見に賛成ですか,それとも反対ですか」という形で問い,それぞれの項目について,「賛成」,「やや賛成」,「どちらともいえない」,「やや反対」,「反対」の中から択一で回答を求めた。III-53表は,各質問項目に対する賛成率(総回答数に対する「賛成」と「やや賛成」の合計数の比)を,一般群と非行群につき示したものである。
 まず,賛成する率の高いものを順に挙げると,一般群では,[1]「義理人情を大切にすべきだ」(70.9%),[2]「悪い者をやっつけるためなら,場合によっては腕力に訴えてもよい」(57.0%),[3]「ひとつのことに熱中するよりも,いろいろなことをやってみるべきだ」(53.8%),[4]「まじめな人よりも,ひょうきんにふるまう人の方が好きだ」(48.4%),[5]「人のことにはあまり深入りしない方がよい」(45.9%)などであり,非行群では,[4]「まじめな人よりも,ひょうきんにふるまう人の方が好きだ」(79.2%),[1]「義理人情を大切にすべきだ」(73.8%),[9]「男は外で働き,女は家庭を守るべきた」(66.9%),[3]「ひとつのことに熱中するよりも,いろいろなことをやってみるべきだ」.(65.6%),[2]「悪い者をやっつけるためなら,場合によっては腕力に訴えてもよい」(60.6%),[5]「人のことにはあまり深入りしない方がよい」(46.5%)などとなっている。

III-53表 価値観・意見(賛成率)

 一方,賛成率の低かったものを順に挙げると,一般群では,[[16]]「自然な守ることも大切だが,生活を便利にする方がもっと大事だ」(6.7%),[15]「まわりから何かいわれないように,目立たないようにする方がよい」(11.3%),[[14]]「自分のやりたいことをやり抜くためには,ルールを破るのも仕方がないことだ」(18.3劾などであり,非行群では,[[14]]「自分のやりたいことをやり抜くためには,ルールを破るのも仕方がないことだ」(16.1%),[12]「リーダーになって苦労するよりは,人に従っていた方が気楽でよい」(17.7%),[[15]]「まわりから何かいわれないように,目立たないようにする方がよい」(19.1%)などとなっている。
 非行群と一般群の間で賛成率に差のない意見として,[1]「義理人情を大切にすべきだ」,[2]「悪い者をやっつけるためなら,場合によっては腕力に訴えてもよい」,[5]「人のことにはあまり深入りしない方がよい」,[6]「年上や目上の人には従うべきだ」,[7]「世の中は,なるようにしかならないものだ」,[14]「自分のやりたいことをやり抜くためには,ルールを破るのも仕方がないことだ」,[11]「努力するよりも,要領よくふるまう方がよいjなどがある。
 次に,一般群と非行群で,賛成率に比較的大きな差のある意見を取り上げると,非行群が一般群よりも高率であるのは,[9]「男は外で働き,女は家庭を守るべきだ」,[4]「まじめな人よりも,ひょうきんにふるまう人の方が好きだ」,[[16]]「自然を守ることも大切だが,生活を便利にする方がもっと大事だ」,[3]「ひとつのことに熱中するよりも,いろいろなことをやってみるべきだ」,[8]「コツコツ努力するよりは,毎日の生活を楽しくやった方がよい」,[[15]]「まわりから何かいわれないように,目立たないようにする方がよい」などがある。
 以上を総合して見ると,非行群は,一般群と大きくかけ離れた意見をもっているとはいえないが,彼らは,男女の役割について伝統的,保守的意見をもっている,「まじめさ』よりも「ひょうきんさ」を重視する,いろいろなことをやってみたがるが,努力よりもその日の生活を楽しく過ごしたがる,あえて自己主張はしたがらない,自然保護よりも生活の利便性を肯定しやすい,などの傾向をもっていることがうかがえる。

III-42図 人の暮らし方