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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第4章/第3節/4 

4 余暇利用

 次に,一般少年と非行少年とで余暇の過ごし方にどのような違いがあるかを幾つかの側面について見ることとする。
 III-39図は,余暇をだれと過ごすかを尋ねた結果を示したものである。まず,全体では,一般群が「友達」と過ごすことが最も多く,次いで,「一人で」,「家族」の順であるのに対して,非行群では,「友達」と過ごすことが最も多く,次いで,「家族」と,「一人で」の順になっている。一般群では,「友達」と過ごすことは多い(46.0%)が,「一人で」過ごしたり(25.9%),「家族」と過ごすこともかなりある(21.4%)のに対して,非行群は,「友達」と過ごすことが圧倒的に多く(73.1%),「家族」と過ごしたり(7.7%),「一人で」過ごすことが少ない(6.9%)。特に女子では,「家族」と過ごす者が一般群では34.1%であるのに比して非行群では6.5%にすぎない。

III-39図 余暇を過ごす相手

 III-40図は,余暇をどこで過ごすかを尋ねた結果である。全体で見ると,一般群が自宅,街,友達の家,野外の順で余暇を過ごすことが多いのに対して,非行群では,友達の家,自宅,街,野外の順で余暇を過ごすことが多くなっており,一般群が自宅で過ごすことの方が友達の家や街で過ごすことよりも多いのに対して,非行群は自宅で過ごすよりも友達の家か街で過ごすことが多くなっている。特に,非行群の女子でこの傾向が強い。
 次に,余暇を「どんなことをして過ごすことが多いか」と質問し,11項目の回答を用意して重複回答を求めた結果を述べる。III-51表は,非行群・一般群及び男女で回答に差が見られた7項目を取り上げて示したものである。男女共に,一般群よりも非行群で多いものは,「バイクや車で出かける」,「パチンコ,ゲームセンターのゲームなどで遊ぶ」,「おしゃべりをしている」などであり,非行群よりも一般群で多いものは,「スポーツをする」,「読書,楽器演奏,手芸,将棋などの趣味を楽しむ」,「勉強や習いごとをする」などである。

III-40図 余暇を過ごす場所

 両群共に余暇の過ごし方には選択率の高低,選択順位に男女差があるのは当然としても,上記のとおり,非行群と一般群の間にはかなり明瞭な差があり,非行群の余暇の過ごし方に遊興的な色彩が強いことがうかがわれる。
 さて,このように余暇を過ごす中で,両群は,それぞれどの程度満足を得ているのであろうか。III-41図を見ると,男女共に一般群の方が非行群よりも不満とする者が多い(一般群男子31.9%,同女子24.8%,非行群男子15.5%,同女子12.9%)。
 不満とする者に対して,その理由を尋ねた結果(重複回答)がIII-52表に示されている。不満理由として高い率で選択されたものの順に,非行群では,男子が,「お金が足りない」,「つまらないことで時間を過ごしてしまう」,「時間が足りない」,「やりたいことが何もない」などであり,女子が,「お金が足りない」,「つまらないことで時間を過ごしてしまう」,「時間が足りない」,「家族などから反対される」などである。一方,一般群では,男子が,「お金が足りない」,「つまらないことで時間を過ごしてしまう」,「時間が足りない」,「施設や場所が近くにない(少ない)」などであり,女子が,「つまらないことで時間を過ごしてしまう」,「時間が足りない」,「お金が足りない」,「施設や場所が近くにない(少ない)」などである。

III-51表 余暇の過ごし方

 「お金が足りない」,「つまらないことで時間を過ごしてしまう」,「時間が足りない」は,両群の男女でいずれも選択順位が高いことは共通であるが,選択率で見ると,非行群と一般群の間に差が見られる。すなわち,「時間が足りない」,「施設や場所が近くにない(少ない)」とする者は,男女共に,一般群の方が非行群よりも多く,「家族などから反対される」,「やりたいことが何もない」とする者は,男女共に,非行群の方が一般群よりも多い。また,女子で,「お金が足りない」とする者は,一般群より非行群に多く,「つまらないことで時間を過ごしてしまう」とする者は,非行群より一般群に多い。

III-41図 余暇に対する満足度

III-52表 余暇に対する不満の理由

 余暇利用では,非行群は,予想されるとおり,男女共に,一般群に比して教養的よりも遊興的であることがわかる。家族などからの規制を感じながらも,非行群はこのような余暇利用で満足しているのに対して,一般群は,時間的余裕や施設不足などを感じるためか満足度が低くなっている。さらに,非行群では,満足すべき余暇の過ごし方そのものを見いだせずにいる者が一般群に比べて多いことがうかがえる。