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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第4章/第3節/2 

2 家族関係

 III-37図は,少年が親を中心とした家族との関係をどのように感じているかを,「自己意識」(本章第2節4(2)参照)と同様の形式で質問し回答を得た結果を示したものである。これによると,「家では自分の部屋に一人でいること」が「ある」(「ある」は,「よくある」と「ときどきある」の合計)とした者は,全体で見ると,非行群(69.0%)よりも一般群(75.1%)で多いにもかかわらず,「家族と話をすること」がある(一般群88.5%,非行群78.9%),「自分の将来について親に話しかけること」がある(一般群61.5%,非行群52.6%)のは,いずれも一般群の方が非行群よりも多くなっており,一般群が非行群に比べて親や家族との心理的結び付きを強くもっている傾向が認められる。さらに,非行群で男女を比較すると,女子が男子よりも上記結び付きが弱いことが知られる。

III-37図 家族との関係

 また,「家族と話をすること」は,男女共に,一般群,非行群初大者,非行群再入者の順で少なくなっており(男子一般群86.0%,同初入者81.8%,同再入者76.6%,女子一般群93.0%,同初入者74.5%,同再大者66.3%),非行の程度が進むに従って,家族との話し合いの機会が減少する傾向がうかがわれる。
 III-38図は,親の養育態度に関する質問への回答結果を示したものである。回答の傾向には性差が見られるので,男女別に述べることとする。まず,「親が厳しすぎると感じること」があるとした者は,両群共に女子の方が男子よりも多い。特に,非行群の女子は,そのように感じる者が多くなっている。男子でも非行群の方が一般群よりも親を厳しいと感じている。
 次に,「自分が何をしていても,親があまり気にしないと感じること」は,男女共に非行群の方が一般群よりも多い。特に女子において,この傾向が強い。
 「親のいうことは気まぐれであると感じること」があるのは,男女共に,非行群より一般群に多い。特に一般群の女子に,そのように感じる者が多くなっている。非行群では,女子の方が男子よりも親は気まぐれと感じる者が多い。
 「親が自分のいいなりになりすぎると感じること」がある者は,両群共に少ないが,非行群の女子で,そのように感じる者が比較的多い。
 以上,非行群では親の厳格,放任をより強く感じるのに対して,一般群では気まぐれをより強く感じる者が多い傾向がうかがえる。