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4 自己適応感 (1) 生き方についての満足度
これまでの分析結果から見て,一般群全体と非行群全体を比較する限りにおいては,家庭,交友,地域・社会の各領域で,非行群と一般群が満足度という観点では,必ずしも著しい差を示しているとはいえない。しかし,男女別に比較してみると,非行群女子は,社会を除くすべての領域で,一般群女子に比して不満とする者が多く,また,非行群男子のうち,不満とする者の不満の理由を検討してみると,一般群に比して深刻な内容が見いだされた。 そこで,以下に,本人が自覚している適応感を探ることとする。 III-32図は,「あなたは,今の自分の生き方にどのくらい満足していますか」と質問した結果を示したものである。これによると,まず,全体では,満足とした者は,一般群が50.3%,非行群が37.8%であり,一方,不満とした者は,一般群が22.5%,非行群が31.1%である。男女別に見ても同様で,非行群が一般群に比して不満感をより多くもっていることがわかる。特に,一般群女子では満足とする者(45.9%)が不満とする者(22.6%)の約2倍であるのに対して,非行群女子では満足とする者(29.6%)と不満とする者(30.5%)とがほぼ同率になっている。また,III-33図を見ると,男女共に,一般群,非行群初入者,非行群再入者の順で不満度が高まっており,非行が深まるにつれて不満感をもつ者が多くなる傾向が認められる。 なお,参考のため,昭和60年の総務庁青少年対策本部の調査「第4回青少年の連帯感などに関する調査」(以下,青対本部調査という。ただし,本章においては,青対本部調査の結果のうち,15歳から19歳までの対象者の数値を引用する。)によると,「あなたは,今の自分の生活に満足ですか,不満足ですか」との質問に対して,不満足(「不満である」と「やや不満である」の合計)とした者は,男女合わせると18.0%で,本調査の一般群の数値よりも低い数値であった。 III-32図 今の自分の生き方に対する満足度 (2) 自己意識本調査では,一般群,非行群がどのような自己意識をもっているかについて13項目の質問をした。質問及び回答の形式は,それぞれの項目について,「あなたは,日ごろの生活で次のような感じになることがありますか」と問い,「よくある」,「ときどきある」,「あまりない」,「まったくない」の中から択一回答を求めるものである。これら13項目のうちから主な7項目を取り上げて結果を示したのがIII-34図である。一般,非行両群共に男女差があるので,男女別に述べると,まず,男子では,非行群がより多く「ある」(「ある」は,「よくある」と「ときどきある」の合計)としたものに,「自分だけが悪く思われている」(非行群67.6%,一般群44.5%),「頼りにされている」(非行群61.7%,一般群42.8%),「世の中の人は助け合っている」(非行群59.3%,一般群42.7%),「世の中から取り残されている」(非行群40.0%,一般群33.5%)などがあり,女子では,非行群がより多く「ある」としたものに,「自分だけが悪く思われている」(非行群72.4%,一般群51.0%),「世の中から取り残されている」(非行群50.4%,一般群32.4%),「心の温まる思いが少ない」(非行群59.2%,一般群44.5%),「執りにされている」(非行群61.7%,一般群48.3%などがある。一般群で非行群よりも多く「ある」とするものは,男女共に,「自分の性格がいやになる」(男子一般群73.4%,同非行群71.2%,女子一般群87.4%,同非行群86.4%)と男子の「心の温まる思いが少ない」(一般群57.1%,非行群54.4%)及び女子の「ものごとに打ち込んでいる」(一般群49.9%,非行群48.0%)である。非行群には「頼りにされている」,「世の中の入は助け合っている」といった肯定的意識も認められる反面,一般群に比して,疎外感,被害感,落ご感が強く認められる。 III-33図 今の自分の生き方に対する満足度 III-34図自己意識 なお,非行群の初入者と再入者との比較で見ると,男女共に,以下の四つの自己意識は,非行が深まるにつれて強くなる傾向が認められる。それらは,「世の中から取り残されている」(男子初入者37.8%,同再入者46,2%,女子初入者46.4%,同再入者62.1%),「自分は何をやってもだめな入間だ」(男子初入者53.4%,同再入者57.2%,女子初入者69.5%,同再入者71.6%),「自分だけが悪く思われている」(男子初入者67.4%,同再入者69.3%,女子初入者70.7%,同再入者76.8%)及び「自分は意志が弱い」(男子初入者78.2%,同再入者86.9%,女子初入者76.1%,同再入者85.3%)である。 |