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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第4章/第2節/1 

第2節 一般的適応感

1 家  庭

 青少年期における重要な生活領域であり,対人関係の基本を構成する家庭に関する満足・不満の度合いを非行群と一般群で比較したのがIII-26図である。質問及び回答の形式は,「あなたは,家庭生活にどのくらい満足していますか」と問い,「満足」,「やや満足」,「どちらともいえない」,「やや不満」,「不満」の中から選択し,択一で回答を求めるものである(以下,満足,不満の度合いを問う質問に対する回答形式は同様である。)。
 まず,家庭生活に満足(「満足」と「やや満足」の合計,以下同じ。)とする者は,男子では,一般群57.3%,非行群64.5%で非行群に多いが,不満(「不満」と「やや不満」の合計,以下同じ。)とする者は,一般群12.2%,非行群13.7%で非行群に多い。一方,女子に見られる両群間の差は顕著である。すなわち,満足とする者は,一般群63.1%,非行群42.5%で,不満とする者は一般群15.5%,非行群29.0%であり,非行群は,一般群に比べて満足とする者が少なく,かつ,不満とする者が多い。

III-26図 家庭生活に対する満足度

 次に,家庭生活に不満とした者に対してその理由を尋ねた結果を述べる(不満の理由については,重複回答である。以下,本章において同じ。)。全体として見た場合,家庭の収入,居住環境など家庭の経済・物理的条件を不満の理由とした者は非行,一般両群間に大きな差は見られないが,非行群が一般群に比して高い比率で不満の理由としたものは,「親の愛情が足りない」(非行群30.4%,一般群11.4%),「親が自分を理解してくれない」(非行群53.7%,一般群41.2%),「家庭内に争いどとがある」(非行群47.2%,一般群30.1%)などで,いずれも親子間や家庭内の対人関係等を背景とした不満理由である。非行群の場合では,上記3理由共に女子の方が男子よりも高率で挙げており,非行群女子の親子関係に問題の大きいことがうかがえる。
 III-27図は,上記3理由につき,男女別及び初入者・再入者別に分布を比較したものである。「家庭内に争いごとがある」とした女子の場合を除き,いずれも一般群,非行群初入者,非行群再入者の順でこれら理由を肯定する比率が高くなっており,非行群の少年は,非行の程度が深まるにつれて,親の理解・愛情不足が家庭に対する不満をもたらしていると感じている様子がうかがえる。