前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 2年版 犯罪白書 第1編/第4章/第2節 

第2節 犯罪者の国外逃亡

 警察庁刑事局の資料によれば,日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡している被疑者は,平成元年末現在で290人であり,前年に比べて17人(6.2%)増加している。この内訳は,刑法犯の被疑者171人,特別法犯の被疑者119人であり,このうち81人(総数の27.9%)は,覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反及び大麻取締法違反の被疑者である。国外逃亡被疑者の国籍(地域を含む。以下,本章において同じ。)を見ると,日本が95人(総数の32.8%)で最も多く,次いで大韓民国(以下「韓国」という。)及び台湾の各35人(総数の各12.1%)となっており,日本を含めたアジアの国籍の者が合計263人で,総数の90.7%を占めている。
 法務省刑事局の資料によれば,平成元年中に我が国が外国に対して犯罪人の引渡しを正式に要請した事例は,西ドイツに対する有印私文書偽造・同行使等事件の1件1名であり,同年中に身柄の引渡しを受けている。また,元年中に我が国が外国から犯罪人の引渡しの正式請求を受けた事例は,アメリカから請求のあったヘロイン輸入共謀罪事件の1件1名であり,同年中に身柄の引渡しを完了している。
 なお,平成元年12月16日,中国人による中国民航機ハイジャック事件が発生し,同機が福岡空港に緊急着陸した際同機から墜落して入院した犯罪人について,中華人民共和国(以下「中国」という。)から我が国に対し,仮拘禁の請求がなされたので,法務大臣の命令により,検察官は,裁判官から仮拘禁許可状の発布を得て,同月31日,同犯罪人を拘禁した。