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 平成 元年版 犯罪白書 第4編/第2章/第4節/2 

2 罪名別比較

 次に,殺人罪,強姦罪及び窃盗罪について,各国の数値の推移を見比べることとするが,いずれの犯罪においても,近年の我が国は,各国と比べ,犯罪発生率は低く,検挙率は高くなっている。もとより,これらの数値の単純な比較のみによって各国の犯罪動向や治安状況を判断できるものではないが,我が国の数値を各国の数値と比較した場合,殺人,強姦及び窃盗の各発生率では,1960年ごろまでは各国の数値とさほど大きな開きはなく,殺人では西ドイツ及びイギリスの各数値を,強姦ではイギリスの数値をそれぞれ上回っていたが,その後,我が国の各発生率がおおむね減少ないし横ばい傾向を続けているのに,各国の各発生率が相当急激に上昇し又は上昇傾向にあるなどするため,近年では我が国と他の国の各発生率との間に,大きな開きが生じていることが注目される。
(1) 殺人罪

IV-11表 殺人事犯の認知件数・発生率及び検挙率(1960年〜1987年)

 IV-11表は,殺人罪について,1960年から1987年までの各国の認知件数,発生率及び検挙率を5年ごとに見たものであり,IV-21図は,各国における発生率の推移を見たものである。
 我が国の発生率は,アメリカ及びフランスの各数値より低いが,1960年代前半までは,西ドイツ及びイギリスの各数値をそれぞれ上回っており,その後1960年代半ばには西ドイツの数値を,1970年代前半にはイギリスの数値をそれぞれ下回るようになっている。1987年の発生率は,アメリカが8.3,イギリスが5.5,西ドイツが4.3,フランスが4.lであるのに対し,我が国では1.3となっている。

IV-21図 殺人事犯の発生率(1946年〜1987年)

 殺人罪の検挙率については,各国と比較した場合,我が国はかなり高い数値を維持してきていると言えるのであって,1987年の検挙率では,西ドイツが94.0%,フランスが93.0%,イギリスが81,5%,アメリカが70.0%であるのに対し,我が国は97.6%となっている。
(2) 強姦罪

IV-12表 強姦の認知件数・発生率及び検挙率(1960年〜1987年)

 IV-12表は,強姦罪について,1960年から1987年までの各国の認知件数,発生率及び検挙率を5年ごとに見たものであり,IV-22図は,各国における発生率の推移を見たものである。

IV-22図 強姦の発生率(1946年〜1987年)

 我が国の強姦罪の発生率は,西ドイツ及びアメリカの各数値より低いものの,1960年代半ばまではこれらの国と並んでかなり高く,その後低下するが,1970年代半ばまではイギリス及びフランスの各数値を上回っており,1980年代に入り急速に低下し各国の数値より低くなっている。1987年の発生率を見ると,アメリカが37.4,西ドイツが8.6,フランスが5.8,イギリスが4.9であるのに対し,我が国は1.5となっている。
 強姦罪の検挙率については,我が国は高率を維持しており,1987年の数値では,フランスが85.6%,西ドイツが71.2%,イギリスが70.7%,アメリカが52.9%であるのに対し,我が国は87.4%となっている。
(3) 窃盗罪

IV-13表 窃盗の認知件数・発生率及び検挙率(1960年〜1987年)

 IV-13表は,窃盗罪について,1960年から1987年までの各国の認知件数,発生率及び検挙率を5年ごとに見たものであり,IV-23図は,各国における発生率の推移を見たものである。

IV-23図 窃盗の発生率(1946年〜1987年)

 我が国の窃盗罪の発生率は,アメリカ及びフランスの各数値より低いが,1950年代には,西ドイツ及びイギリスの各数値を上回ることがあるなど,比較的高かったが,1960年代以降各国の数値が上昇する傾向にあるなかで緩やかに低下し,西ドイツ及びイギリスの各数値より低くなっている。また,1970年代後半には,我が国の数値にも上昇傾向が認められるが,各国の数値は我が国を上回る急上昇を遂げている。1987年の数値は,イギリスが5,803,アメリカが4,940,西ドイツが4,565,フランスが3,503であるのに,我が国は1,116となっている。このように,窃盗罪の発生率の推移は,既に見た主要な犯罪の合計のそれに類似しているが,これは,窃盗罪が主要犯罪中において圧倒的割合を占めていることによるものと思われる。
 窃盗罪の検挙率についても,各国と比べ,我が国は高率を保っており,1987年の検挙率は,イギリスが29.3%,西ドイツが27.8%,アメリカが17.7%,フランスが16.3%であるのに対し,我が国は60.2%となっている。