昭和63年に収容鑑別の対象となった少年について，幾つかの側面からその特性を見ると，次のとおりである。
(1)　非行名と年齢層
　III-27表は，非行名と年齢層との関係を見たものである。非行名では，窃盗が37,5%と最も多く，以下，虞犯12.3%，傷害9.6%，道路交通法違反9.3%，毒物及び劇物取締法違反8.3%，恐喝5.0%，覚せい剤取締法違反4.3%などとなっている。
　年齢層別では，年長少年(本節では20歳以上の者を含む。)が44.8%で最も多く，次いで，中間少年が37.6%，年少少年(本節では14歳未満の者を含む。)17.6%の順であるが，男女別に見ると，男子では，年長少年と中間少年の，女子では中間少年と年少少年のそれぞれ総数に占める比率が高くなっている。
　非行名と年齢層との関係を男女別に見ると，男子では，いずれの年齢層においても窃盗が40%前後を占め，次いで，年少少年でば虞犯及び傷害が，中間少年では道路交通法違反が，年長少年では道路交通法違反及び傷害がそれぞれ高率である。女子では，年少及び中間少年において虞犯がそれぞれ69.6%と44.5%を占め，年長少年において覚せい剤取締法違反が39.4%を占めているほか，年少少年では窃盗の，中間少年では毒物及び劇物取締法違反，窃盗並びに覚せい剤取締法違反の，年長少年では窃盗，虞犯並びに毒物及び劇物取締法違反の占める各比率がそれぞれ高く，また，年長になるに従って窃盗の比率が少しずつ上昇し，さらに，覚せい剤取締法違反の比率が顕著に上昇している。

III-27表　非行名・年齢層別構成比(昭和63年)

(2)　非行時の前歴
　III-28表は，非行名と非行時の前歴との関係を見たものである。非行時に保護処分等が継続していた者は37.4%を占めており，その大部分が保護観察である。また，非行名との関係で見ると，毒物及び劇物取締法違反，覚せい剤取締法違反及び窃盗を犯した者において，保護処分等を受けていた者の比率が高い。
(3)　非行名と入所回数
　III-29表は，非行名と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。少年鑑別所に初めて入所した者が，67.7%を占めている。非行名と入所回数との関係を見ると，再入者(2回以上の者)の割合が多いのは，薬物関係事犯と財産犯であり，再入者の割合が少ないのは，道路交通法違反と性犯罪である。
(4)　知能及び精神状況
　昭和63年に全国の少年鑑別所に入所した者のうち，知能指数の判明した者(1万8,792人)の内訳を見ると，知能指数59以下は1.7%，60〜69は5.0%，70〜79は18.0%，80〜89は24.7%，90〜99は28.7%，100〜109は14.8%，110〜119は5.2%，120以上は2.0%となっている。
　また，精神診断の結果，精神障害の認められた者は総数の2.1%であり，その内訳は，精神薄弱1.2%，精神病質0.1%，神経症0.1%，その他の精神障害0.8%となっている。
(5)　入所前の問題行動
　昭和63年に全国の少年鑑別所に入所した者につき，入所前の問題行動を男女別に見ると，男子の87.9%，女子の83.1%が喫煙し，男子の50.8%，女子の45.9%が飲酒している。性経験のある者は，男子が72.6%，女子が90.7%，家出歴のある者は，男子が53.9%，女子が87.5%，万引歴のある者は男子が53.2%，女子が63.9%，覚せい剤濫用歴のある者は，男子が4.9%，女子が19.1%，有機溶剤濫用歴のある者は，男子が59.7%，女子が73.9%，自動車等の無免許運転歴のある者は，男子が76.5%，女子が41.6%となっており，飲酒，喫煙及び自動車等の無免許運転歴のある者は男子に多いが，性経験，家出，万引き及び薬物濫用については女子に多い。

III-28表　非行名・非行時の前歴別構成比(昭和63年)

III-29表　非行名・入所回数別構成比(昭和63年)