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 平成 元年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 終局裁判

(1) 第一審
 昭和62年中の地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所による第一審裁判所としての終局裁判の結果を見たものがII-9表及びII-10表である。
 地方裁判所及び家庭裁判所の終局処理人員総数は,前年より1,322人減少して6万1,876人(地方裁判所の終局処理人員は,前年より1,243人減少して6万1,516人,家庭裁判所の終局処理人員は,同じく79人減少して360人である。)となっている。これを罪名別に見ると,前年と同様に覚せい剤取締法違反が1万3,856人(総数の22.4%)と最も多く,以下,業過9,722人(同15.7%),道交違反7,502人(同12.1%),窃盗5,029人(同8.1%),詐欺4,313人(同7.0%),傷害4,124人(同6.7%)などの順となっている。前年に比べて増加したのは,公職選挙法違反(573人・87.2%増)及び賭博・富くじ(436人・58.9%増)などであり,減少したのは,競馬法違反(39人・18.7%減)及び道交違反(587人・7.3%減)などである。また,総数のうち360人は,家庭裁判所の処理に係る少年に対する成人の刑事事件であって,懲役言渡人員224人中の223人(99.6%)は児童福祉法違反によるもの,罰金言渡人員131人中の87人(66.4%)は労働基準法違反によるものである。無罪率は,総数で0.1%である。

II-9表 罪名別地方・家庭裁判所終局処理人員(昭和62年)

II-10表 罪名別簡易裁判所終局処理人員(昭和62年)

 簡易裁判所の通常手続による終局処理人員総数は,前年より662人(4.6%)減の1万3,761人である。懲役言渡人員中93.8%の1万1,419人が窃盗であり,通常手続による罰金言渡人員中68.5%の762人は,業過及び道交違反によるものである。通常手続における無罪率は,総数で0.3%であるが,罪名別に見ると,傷害の4.3%及び業過の3.9%が際立って高い。略式手続によって,昭和62年中に罰金又は科料に処ぜられた者は,162万8,811人であり,罪名別構成比で見ると,業過及び道交違反が合わせて95.6%と圧倒的に多く,これに次いで傷害が0.7%,公職選挙法違反が0.5%となっている。
(2) 上訴審
 昭和62年に言い渡された第一審判決に対する上訴率を見ると,地方裁判所の判決に対しては9.2%,簡易裁判所の判決に対しては4.6%となっている。62年の高等裁判所の控訴受理人員は6,062人で,これを控訴申立当事者別に見ると,被告人側のみの申立てによるものは98.2%,検察官のみの申立てによるものは1.5%,双方からの申立てによるものは0.4%である。
 II-11表は,昭和62年中に高等裁判所が控訴審として処理した結果を,罪名別に見たものである。終局処理人員総数は,前年より50人増の6,189人で,そのうち16.5%は控訴が取り下げられ,66.2%は控訴が棄却され,16.8%は原判決が破棄された上改めて判決が言い渡され(破棄自判),0.2%は原判決が破棄されて更に審理を尽くすべく第一審に差し戻され,又は移送されている。これを罪名別に見ると,取下率は,暴力行為等処罰法違反が29.3%,覚せい剤取締法違反が26.2%,窃盗が25.2%と高く,破棄自判の率は,業過が31.4%,詐欺が28.3%と高い。破棄理由を見ると,破棄人員総数1,055人中30.5%の322人は量刑不当によるものであり,自判の結果,裁判が覆されて無罪となった者は18人である。なお,検察統計年報によれば,検察官が第一審の無罪判決を不服として控訴した事件のうち,62年中には19人の被告人に対し控訴審の判決が言い渡されているが,そのうち17人(89.5%)については,第一審判決が覆されて有罪となっている。
 昭和62年中に言い渡された控訴審の判決に対する上告率を見ると,全体では33.2%で控訴率に比べると高くなっている。62年の最高裁判所の上告受理人員は1,611人であるが,そのうち検察官の申立てに係る者は5人である。62年中に最高裁判所が上告審として終局処理した人員は,前年より195人減の1,585人で,その内訳は,上告取下げ271人(17.1%),上告棄却1,304人(82.3%),原判決破棄3人(0.2%)などとなっている。

II-11表 罪名別控訴審終局処理人員(昭和62年)