第3節 捜査・司法の国際共助 外国の裁判所から我が国の裁判所に対し,外交機関を経由するなど一定の条件を具備した嘱託がなされたときは,我が国の裁判所は,外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法(明治38年法律63号)に基づき,民事及び刑事の訴訟事件に関する書類の送達及び証拠調べにつき,国内法に従って法律上の「輔助」を与えることとされているが,最高裁判所の資料によれば,昭和63年においては,ドイツ連邦共和国の裁判所から刑事の訴訟事件に関する証人尋問の嘱託を受けたものが1件あり,これは,同年中に同法に基づいて処理され七いる。なお,同年中に,刑事の訴訟事件に関して,我が国の裁判所から外国の裁判所に対して嘱託したものはない。 次に,犯罪の捜査共助等は,外国又は国際刑事警察機構(ICPO)から要請がなされた場合に,国際捜査共助法(昭和55年5月29日法律69号)に基づいて行われている。同法では,外国から刑事事件の捜査に関して共助の要請があった場合に,[1]その要請が,原則として外交機関を通じてのものであること,[2]政治犯罪でないこと,[3]捜査の対象となっている行為が日本国内で行われた場合,日本国の法令上罪に当たること,[4]相互主義の保証の下で行われたものであることなどを要件に,当該外国の刑事事件の捜査に必要な証拠を提供することとされており,法務省刑事局の資料によれば,昭和63年においては,アメリカ合衆国,カナダ,フランス共和国,イタリア共和国,ギリシア共和国,ノールウェー王国,オーストラリア連邦,ソヴイエト社会主義共和国連邦,インド及びルワンダ共和国から,証拠物の提供,関係者の供述調書作成依頼等合計19件の捜査共助の要請を受け,うち16件については,同年中に同法に基づいて処理されている。他方,我が国から外国に捜査共助を要請した事例は,アメリカ合衆国に対するもの2件,ニュー・ジーランド及びパキスタン回教共和国に対するもの各1件であり,うち2件については同年中に正式回答を受けている。また,同法では,国家公安委員会がICPOから外国の刑事事件の捜査についての協力の要請を受けたときの協力のための調査手続についても定めている。ICPOに対する協力は,いわゆる証拠の提供そのものを目的とするものではなく,調査の結果得られた捜査上有益な資料,情報を提供することを内容とするものであり,警察庁の資料によれば,63年においては,国家公安委員会がICPOから協力の要請を受けたものは366件で,また,警察庁がICPOを通じて外国の警察組織へ協力の要請をしたものは479件となっている。
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