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 平成 元年版 犯罪白書 第1編/第2章/第4節/1 

第4節 交通犯罪

1 概  説

 交通犯罪には種々の態様のものがあるが,ここでは,交通関係業過及び道交違反を取り上げることとする。
 交通犯罪は,自動車保有台数及び自動車運転免許保有者数の増加に伴う道路交通の量的増大と密接に関連して推移してきているが,自動車及び原動機付自転車の保有台数は,依然として増加傾向にあり,昭和63年には,前年より約236万台(3.3%)増加して約7,362万台に達している。しかし,その内訳を見ると,自動車は前年より約273万台(4.8%)増加して約5,921万台になったが,原動機付自転車は前年より約37万台(2.5%)減少して約1,441万台となっている。また,自動車運転免許保有者数も増加を続けており,63年末には,前年より約170万人(3.1%)増加して約5,742万人となっている。このうち,女子の占める比率は前年の35.8%から更に上昇して36.5%となった。
 I-35表は,最近5年間において,人の死傷を伴った交通事故の発生件数及び死傷者数を示したものである。交通事故の発生件数は,昭和59年には,前年に比して減少したものの,60年から再び増勢に転じ,63年には,前年よP)2万3,758件増加し,61万4,481件となっている。

I-35表 交通事故の発生件数及び死傷者数(昭和59年〜63年)

 交通事故による死亡者数は,1万344人で前年より997人増加している。交通事故による死亡者数は,戦後急速に増加し,昭和45年には1万6,765人の多きを数えた。その後次第に減少し,51年以降は,1万人を超えることなく推移してきたが,63年には前年より死亡者の数が10.7%増加し,再び1万人を超えることとなったものである。人口10万人当たりの死亡者数は8.4人で62年より0.8ポイント増加し,自動車1万台当たりの死亡者数は1.4人で0.1ポイントの増加となっている。負傷者数は,前年より3万666人増加して75万2,845人どなっている。なお,死亡者のうち,36.0%は自動車乗車中,28.7%は歩行中,24.7%は二輪車乗車中の事故によるものであった。
 I-36表は,人の死傷を伴う交通事故を起こした自動車を車種別に見たものである。普通乗用自動車の占める比率が最も高く,昭和63年では57.0%であり,このうち,94.6%は自家用自動車の事故である。これは,自家用自動車の保有台数が多いことによるものであるが,自動車1万台当たりの事故発生件数で見ると,自家用普通自動車は103.2件であるのに対し,事業用普通自動車(タクシー及びハイヤー)は692.0件と圧倒的に多い。なお,原動機付自転車による事故の構成比は,6.8%で,1万台当たりの事故発生件数は26.9件である。
 事故の類型を見ると,車両相互間の事故が49万9,771件で交通事故全体の81.3%を占め,そのうち31.8%が出合い頭の衝突,27.7%が追突事故となっている。人対車両の事故は8万3,427件(13.6%),車両単独の事故は3万990件(5.0%)である。

I-36表 車種別交通事故発生件数の構成比(昭和59年〜63年)