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 昭和37年版 犯罪白書 第三編/第四章/二/2 

2 少年院仮退院者

 まず,少年院仮退院者の保護観察の当初における保護観察所へ出頭状況をみると,III-41表のとおり,昭和三一年以降の不出頭率は,年々減少の傾向にあり,昭和三五年には二・九%の二二八人にすぎず,他の種類の保護観察対象者の不出頭率に比し最も低率である。これは,少年院を仮退院する際に,できるだけ保護者をして少年院に出迎えさせ,保護者と同伴で保護観察所へ出頭するように仕向けているためである。

III-41表 少年院仮退院者の保護観察開始時の出頭・不出頭人員と率(昭和31〜35年)

 一方,不出頭者はそのまま所在不明となることが多い。また,当初においては出頭したが保護観察の途中に所在不明となるものも少なくない。III-42表は,昭和三一年以降の所在不明者の状況をみたものであるが,逐年増加の傾向を示し,昭和三五年には年末現在人数の九・二%を占める九六二人が所在不明となっている。この所在不明率は,家庭裁判所で保護観察処分に付された少年の所在不明率の六・〇%にくらべると,高率といわなければなるまい。ことに,保護観察の当初における出頭率が良好だけに,その所在不明率の高いことは,注目を要するところである。

III-42表 少年院仮退院者中の所在不明人員と率等(昭和31〜35年)

 次に保護観察の終了時における少年院仮退院者の成績をその事由別にみると,III-43表のとおり,昭和三五年には,期間満了によるものが七九・〇%,仮退院の期間中成績良好により退院に切り替えられたものが一・二%,再犯等による取消および遵守事項違反により少年院に戻し収容されたものの合計が一九・三%である。再犯等による取消,戻し収容が昭和三一年の一四・五%からほぼ逐年増加して,昭和三五年に一九・三%となったことは,少年院仮退院者の保護観察の成績があまり良好でないという印象を受ける。しかし,保護統計年報によると,昭和三五年に期間満了で終了したもののうち,成績の良好なものが八・九%,稍良のものが一〇・三%,普通のものが四一・五%,不良のものが一五・六%となっているから,成績良好のうちに終了したものも相当数いるわけである。

III-43表 少年院仮退院者の保護観察終了人員と終了事由別人員の率(昭和31〜35年)

 以上のように,少年院仮退院者の保護観察は,所在不明の率が比較的高く,また,その終了時における成績も必ずしも芳しいものとはいい難いが,これには,少年院出身者という烙印がおされるために一層その更生が困難になるという事情も相当影響しているのではないかと考えられる。