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昭和三六年に一四歳以上の少年で刑法犯によって警察に検挙された者の数は,一五八,八八四人で,一四歳以上二〇歳未満の少年人口一,〇〇〇人に対し一四・〇人の割合で検挙されたことになる。これを二〇歳以上の成人の場合と比較すると,昭和三六年に刑法犯によって警察に検挙された成人の数は,四二二,四三〇人で,成人人口一,〇〇〇人に対し七・三人の割合で検挙されたことになるから,人口対比率でみる限りは,少年は成人より犯罪率が高いといえる。この比率は,少年一,〇〇〇人のうち一四人までが刑法犯で警察に検挙されるという割合を示すから,少年犯罪の重大さを物語るものといえよう。
I-59表は,少年と成人とに分け昭和三〇年以降の刑法犯検挙人員と人口対比率を示したものであるが,これによると,検挙人員の実数において,少年は年々増加し,昭和三六年には昭和三〇年の六四%の増加を示しているが,成人は昭和三〇年から昭和三五年までゆるやかな下降線をたどり,昭和三六年にはやや上昇しているが,昭和三〇年までに達していない。また,人口一,〇〇〇人に対する比率においては,少年は昭和三〇年の九・二人から昭和三六年の一四・〇人まで逐年増加傾向を示しているのに対して,成人は昭和三〇年の八・六人から昭和三六年の七・三人まで年々減少傾向をみせているのである。 I-59表 少年・成人別刑法犯検挙人員と率等(昭和30〜36年) このように,刑法犯の検挙人員は少年において増加し,成人においてゆるやかな下降傾向を示しているから,刑法犯の検挙人員総数のなかで少年の占める割合は,逐年高まっており,昭和三〇年の一八・二%から昭和三六年の二七・三%まで,最近の七年間に約一〇%近くの上昇をみているのである。刑法犯で警察に検挙されるもののうち三割弱が少年であるということは,驚くべき数字だといえるであろう。以上は刑法犯の検挙人員を警察統計でみたものであるが,次に特別法犯について検察統計により検察庁に送致された人員をみると,I-60表のとおりである。これによると,特別法犯で検察庁に送致される人員は,少年,成人ともに増加しているが,それぞれの人口一,〇〇〇人に対する対比率をみると,少年は昭和三三年の二一・八人から昭和三五年の三九・三人へと約八割の上昇を示しているのに対し,成人は三四・二人から四一・九人へと約二割の上昇をみせているにすぎない。すなわち,少年の人口対比率は成人のそれに迫りつつあるのである。特別法犯の大部分は,道交違反であり,したがって,少年の道交違反が最近著しく増加したために,このような傾向を示しているのである。 I-60表 特別法犯・刑法犯の少年・成人別検察庁受理人員と率(昭和33〜35年) 次に,最近犯罪少年のロー・ティーン化が各方面から問題とされているが,一四歳以上二四歳までの青少年をその年齢層によって五つのグループ(一四-一五歳,一六-一七歳,一八-一九歳,二〇-二四歳の五群)に分け,それぞれのグループのものが刑法犯につき警察に検挙された人員数とそれぞれの人口一,〇〇〇人に対する対比率をみると,I-61表のとおりである。これによると,検挙人員の実数では,年齢の高いグループほど検挙数が高く,一四-一五歳の年少少年が最も少ないが,昭和二九年を一〇〇とする指数でその増加率をみると,年齢の低いグループほどその増加率が高く,二〇-二四歳の青年層では昭和三六年は一〇四で最も低く,一四-一五歳の年少少年層では二一七で昭和二九年の二倍強の増加率を示している。この傾向は,それぞれの人口一,〇〇〇人に対する対比率でみても同様なことがいえる。すなわち,年少少年は昭和二九年の六・一人から昭和三六年の一一・七人まで約二倍の増加を示し,一六-一七歳の中間少年のグループは,八・五人から一四・二人,一八-一九歳の年長少年のグループは一二・三人から一六・一人,青年グループは一六・一人から大した変化を示さず,年齢層の高いグループほど増加率が低いのである。とくに,青年層ではほとんど増減をみせていないのである。I-61表 年齢層別の青少年刑法犯検挙人員と対人口比率等(昭和29〜36年) このような傾向を犯罪少年のロー・ティーン化傾向とただちにいえるかどうか疑問がないわけではないが,低年齢層に犯罪の増加率が著しいということは,注目を要するものといえるとともに,その原因について実証的な究明を要するものといえよう。いずれにしても,低年齢層の少年に犯罪が多くなるということは,少年犯罪対策の無力を示すものであって,憂慮すべき現象だといわなければなるまい。この年齢低下傾向に関連して注意すべき点は,いわゆる終戦つ児の増加に伴って今後当分の間少年人口が著しく増加するということである。この点は本編第一章でもふれたところであるが,いわゆる高校急増対策でみられるように,高校進学適齢生徒の急増である。I-62表は,昭和三五年以降の少年人口の増加率を年齢層に分けて示したものであるが,これによると,少年人口は昭和四一年がピークとなり,それ以降は漸次減少して昭和四五年にはほぼ昭和三五年と同一水準に達する見通しである。年齢層別にみると,年少少年層は昭和三八年がピークに,中間少年層は昭和四〇年がピークに,年長少年層は昭和四二年がピークとなり,それ以降は漸次減少することになっている。 I-62表 少年人口の推移(昭和35〜45年) 人口が増加すればするだけ,他に特段の条件が加わらない限り,犯罪も増加するといわれており,このことは少年についても例外ではあり得ないから,今後の少年人口の増加に伴って少年犯罪とくに低年齢層の犯罪の増加が予想されるのである。この意味からも,少年犯罪増加の原因を究明し,これを防止するための抜本的対策の樹立が期待されるのである。 |