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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第三章/三/4 

4 ひき逃げ

 交通犯罪のなかで一般に最も悪質だといわれているものに「ひき逃げ」がある。交通事故をおこし,人の身体に死傷の結果を与えながら,救護措置や警察官に対する申告をしないで,逃走する行為である。救護措置や警察官に対する申告をしないことが,道義的にみて悪質であるばかりではなく,逃走することによって,刑事および民事上の責任を回避しようとする点に悪性が認められるのである。I-58表は,昭和三三年以降の自動車および原動機付自転車によるひき逃げ(人身事故)の発生および検挙件数を示したものであるが,その発生件数は,昭和三三年以降増加し,昭和三五年には一〇,八〇七件となっている。そしてひき逃げに際して五四三人の死者を出している。

I-58表 ひき逃げ事故の発生・検挙件数等(自動車等)(昭和33〜35年)

 ひき逃げの犯人を捜査することは一般にむずかしいといわれている。自動車のナンバーを目撃した者があるとか,物証を現場に残したような場合には比較的容易であるが,これらの証拠や証人が存在しないときには,犯人の発見は困難を伴うことが多い。ところで,ひき逃げの検挙率をみると,昭和三五年には六四・九%であって,昭和三三年以降漸次上昇の傾向にはあるが,必ずしも良好な検挙率とはいえない。