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 昭和37年版 犯罪白書  

はしがき

 犯罪の動向は,経済現象の変動と異なり,わずか一年位の間にそれほどきわだった変化をみせるものではない。この意味では,毎年の『犯罪白書』に新味をもることは,著しい困難をともなうが,しかし,犯罪傾向に変化がおこるときは,まずその発芽ともいうべき徴候がうかがわれ,これが年の経過とともに徐々に顕著な傾向を示すのが普通である。この発芽ともいうべき徴候を把握するためには,毎年各種の犯罪についてよくその傾向を観察することがぜひ必要である。このような考えから,昭和三七年度の犯罪白書を「犯罪の動向と犯罪者処遇上の問題点」と題して世に送ることとした。
 したがって,本年度の犯罪白書では,犯罪の動向と犯罪者の処遇に関する諸問題を幅ひろくとりあげることとし,また,それぞれのテーマについての問題点を指摘することにもつとめた。すなわち,第一編では,まず犯罪の概況を紹介し,次いで昨今世の注目をひいている選挙犯罪,麻薬犯罪,交通犯罪を特殊犯罪として詳述し,また,刑事政策上一般の関心を集めている少年犯罪,累犯者の犯罪,精神障害者の犯罪について論及し,とくに精神障害者の犯罪には重点をおいた。さらに,刑の量定については,生命犯の科刑について英独とわが国との量刑の比較にふれた。第二編と第三編では,成人犯罪者と少年犯罪者とに分け,それぞれに対する処遇の実情を明らかにした。
 本書を作るにあたっては,法務省各部局の協力を得たが,本書の内容に関する責任は,もっぱら当研究所にあることはいうまでもない。
昭和三七年四月
竹原 精太郎 法務総合研究所長