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2 多数回受刑仮出獄者の特性 それでは,保護観察調査の対象となった仮出獄者1,203人(以下,本節において「調査対象者」という。)の特性を見ることとする。
(1) 入所度数及び男女別 まず,入所度数別の人員(構成比)を見ると,6度の者が405人(33.7%),7度の者が279人(23.2%),8度の者が199人(16,5%),9度の者が137人(11.4%),10度以上の者が183人(15.2%)であり,入所度数が多くなるに従い,その人員は減少している。 次に,調査対象者の男女別構成比を見ると,男子97.8%(1,177人),女子2.2%(26人)であり,女子の比率は極めて低くなっている。ちなみに,昭和61年に新たに受理した仮出獄者の総数1万8,130人(以下,本節において「新受仮出獄者総数」という。)における女子の占める比率は5.8%(1,059人)であり,受刑歴の多い調査対象者中の女子の比率は著しく低いと言える。 (2) 年 齢 IV-61表は,保護観察開始時の年齢層(以下,本節において「年齢層」という。)について,入所度数別に(以下,本節において「入所度数6度以上の者」を「6・7度」,「8・9度」及び「10度以上」に細区分する。),その構成比を見たものである。 まず,新受仮出獄者総数のうち,入所度数が5度以下の者(1万6,851人)について,その年齢層別構成比を見ると,最も比率が高いのは30歳代の者の35.6%であり,次いで,20歳代の者の28.1%となっている。これに対して,入所度数が6度以上の者である調査対象者(1,203人)の場合は,40歳代の者の41.8%を最高として,50歳代の者の35.7%が二番目に高く,この両年代で総数の77.6%と約8割にも達している。 IV-61表 多数回受刑仮出獄者等の入所度数別年齢層の構成比 (3) 罪 名調査対象者の仮出獄となった刑に係る罪名について,その構成比(人員)を見ると,最も多いのは窃盗の56.9%(685人)で全体の過半数を占め,次いで,覚せい剤取締法違反の18.9%(227人)が多く,以下,詐欺の8.7%(105人),傷害の3.5%(42人),暴力行為等処罰法違反の2.0%(24人)などの順となっている。なお,新受仮出獄者総数のうち,入所度数が5度以下の者の罪名別構成比を高い順に見ると,覚せい剤取締法違反(29.8%),窃盗(27.9%),業過(7.3%),詐欺(6.9%),道路交通法違反(4.5%)などであり,これらの入所度数5度以下の者と比較すると,受刑歴の多い調査対象者については,窃盗の比率が著しく高く,さらに,入所度数が多くなるほどその比率が上昇する傾向を示している。 (4) 知能指数,精神障害の有無及び健康状態 次に,IV-62表は,調査対象者と入所度数が5度以下の者について,入所度数別に知能指数の構成比を見たものである。これによると,受刑歴の多い者の方が,知能指数の低い者の比率が高く,同時に,知能指数の高い者の比率が低くなっており,この傾向は入所度数の多い者ほど顕著になっている。 また,精神状況について入所度数別に見てみると,精神障害のある者の比率は,入所度数が5度以下の者は3.0%(精神薄弱2.4%,精神病質0.1%,神経症0.1%,その他の精神障害0.4%)であるのに対して,6度以上の調査対象者では5.9%(精神薄弱4.4%,精神病質0.3%,神経症0.1%,その他の精神障害1.1%)と約2倍も高く,さらに,調査対象者の中でも,入所度数が6・7度の者は4.8%,同8・9度の者は7.1%,同10度以上の者は7.7%と,入所度数が増えるほど精神障害のある者の比率は高くなっている。 調査対象者の保護観察開始時における身体状況や健康状態を見ると,身体上の疾患や障害がある者及び老衰状態にある者は269人(22.4%)であり,これを入所度数別にそれぞれの構成比(人員)を見ると,入所度数6・7度の者は21.1%(144人),同8・9度の者は21.4%(72人),同10度以上の者は29,O%(53人)と,入所度数が多い者ほど,身体上の疾患・障害等を有する者の比率が高くなっている。 IV-62表 多数回受刑仮出獄者等の入所度数別知能指数の構成比 (5) まとめ以上のとおり,入所度数が6度以上の多数回受刑仮出獄者については,入所度数が5度以下の仮出獄者と比較して,保護観察開始時の年齢では比較的高い年齢層の者の比率が高く,知能指数の低い者,精神障害を有する者,身体上の疾患・障害等を有する者の各比率も高く,しかも,入所度数が多い者ほどこれらの各比率が上昇する傾向が認められる。このように,多数回受刑仮出獄者に対する保護観察には,処遇上多くの問題点があることを示唆している。 |