第1節 特別調査から見た多数回受刑者の概況 累犯の防止は古くて,しかも新しい問題である。矯正処遇は,受刑者の改善更生・社会復帰を目的として行われているのであるが,それにもかかわらず,刑務所から出所した後再び犯罪を犯して再入所する者の数は,必ずしも少なくない。しかも,入所度数が多くなるにつれて,出所後再入所する者の比率が高くなる傾向にある(本編第2章第1節参照)。刑務所に入所する者は,検挙された者の中のごく一部にすぎず,また,重大犯罪を犯した者であったり,既に起訴猶予の処分や刑の執行猶予等の裁判を受けながら更生しなかった者などであり,言わば「選ばれた犯罪者」とも言うことができる。その中でも,刑務所入出所を繰り返す多数回受刑者は,特に犯罪傾向の進んだ者であるから,その更生は非常に困難であると言えるが,行刑の実務は,現実にこれらの受刑者を対象として,その円滑な社会復帰を図るために日々努力しているのである。 それでは,現在,我が国において,特に入所度数の多い刑務所受刑歴10度以上の「多数回受刑者」は,何人存在し,どのような者たちであり,どのような処遇を受けているのであろうか。本章では,これらの多数回受刑者について,法務総合研究所が実施した調査に基づき,その特性や生活状況等の実態を明らかにするとともに,これに対する処遇の現状等について述べることとする。
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