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 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第3章/第3節/3 

3 罪種の変遷

(1) 罪種別人員構成比の変化
 多数回前科者の犯す犯罪の罪種が,犯数を重ねるにつれてどのように変化するかを明らかにするために,初犯から第4犯まで(「前期」という。)と最終刑から前4犯目まで(「後期」という。)の罪種別構成比を見たのがIV-31表である。前期,後期を通じて,粗暴犯,財産犯が多いことに変わりはない(初犯時では,両罪の合計で69.3%)ものの,その比率はいずれも後期においては減少しており(最終刑では,同48.8%),特に財産犯の減少が顕著である。後期において前期より比率が増加傾向にある罪種は,薬物事犯,風俗事犯であるが,薬物事犯の増加が著しい。性犯罪と凶悪犯は少数であり,前期,後期共に,余り変化は見られない。

IV-30表 多数回前科者の年代別罪名順位

IV-31表 多数回前科者の罪種別人員構成比の推移

(2) 罪種の変化
 次に,初犯時の罪種とその後犯された罪種との関係を知るために,初犯時に粗暴犯と財産犯を犯した者が,第2犯から第4犯まで(「前期」という。)及び最終刑から前3犯目まで(「後期」という。)に,どのような罪種の犯罪を犯しているかを見たのがIV-32表である。まず,粗暴犯を見ると,初犯時が粗暴犯である者1万5,243人のうち,第2犯で63.1%,第3犯で60.5%,第4犯で58.6%が同じく粗暴犯を犯しており,前期においては同種犯罪を犯す者が多数を占めている。ところが,後期において同種の粗暴犯を犯した者は,最終刑から3犯前で45.7%,同2犯前で43.8%,最終刑で40.8%と漸減しており,その他の罪種の犯罪を犯す者の割合が高くなっている。その最終刑について見ると,その他の罪種の薬物事犯が14.3%,風俗事犯が7.2%で,財産犯が9.8%などとなっている。次に,初犯が財産犯である者1万6,464人について見ると,同じ財産犯を犯している者は,第2犯で69.7%,第3犯で62.6%,第4犯で57.9%であって,前期においては同種犯罪を犯す者が多数を占めるが,後期においては,最終刑から3犯前で45.0%,同2犯前で43.4%,最終刑で42.7%となっており,粗暴犯と同様,その他の罪種の犯罪を犯す者の割合が高くなっている。その最終刑について見ると,粗暴犯20.1%,薬物事犯8.3%,風俗事犯5.2%などとなっている。このように,財産犯,粗暴犯を犯す者は,前期においては同種の犯罪を犯す傾向が強いが,前科を重ねるにつれて,その犯す犯罪は多種のものへ分散されていくようである。
(3) 罪種間の親和性
 このように,多数回前科者の中には,同種の犯罪を繰り返す者と異種の犯罪を犯す者が存在するが,これらの者が犯す犯罪の各罪種相互間の親和性がどうなっているかを,総数と初犯から第5犯まで及び第6犯から第10犯までに分けて示したのがIV-33表である。10犯以上の多数回前科者になると同種の犯罪のみを犯す者は少ないが,その中で財産犯のみを犯した者は,全前科を対象とした総数では3.6%であり,初犯から第5犯まででは10.4%,第6犯から第10犯まででは7.8%となっている。その他の罪種では同種犯罪のみを犯す者は極めて少なく,多くの者は多種類の犯罪を犯しているが,その中で財産犯及び粗暴犯のみを犯した者は,総数では2.7%,初犯から第5犯までは10.3%,第6犯から第10犯では5.8%である。ところが,主として財産犯又は主として粗暴犯を犯す傾向にある者は比較的多いので,これを見ると,全前科のうち5割以上が財産犯である者は総数の23.7%,同じく8割以上が財産犯である者は同11.2%であり,また,全前科の5割以上が粗暴犯である者は総数の28.7%,同じく8割以上が粗暴犯である者は同4.8%となっている。

IV-32表 多数回前科者の犯す犯罪の罪種の変化

IV-33表 多数回前科者の犯数別犯罪の親和性