前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/4 

4 刑罰の種類と科刑状況

 次に,これらの多数回前科者が,どのような種類の刑罰を受けているかを見るために,その受けた刑をすべて計上して累計すると,その合計数は58万3,963回であるが,そのうち最も多いのは有期懲役の29万599回(全体の49.8%)で,次が罰金の27万5,964回(同47.3%),科料の1万2,296回(同2.1%)である。有期禁錮と拘留はいずれも全体の0.2%で極めて少なく,また,その他(無期懲役・無期禁錮,刑の免除など)が同0.4%となっている。すなわち,多数回前科者の受ける刑の大部分は有期懲役と罰金である。なお,罰金のうち88.4%,科料のうち99.4%は,簡易裁判所での略式命令によるものである。
 これらの刑罰は,それによってはく奪される法益の内容によって,自由刑(懲役,禁錮及び拘留)と財産刑(罰金及び科料)とに区分される。この2種の刑の間には,それが法定刑として定められる犯罪の種類や刑の執行方法等が異なるため,累犯者の実態を見るに際して,この両者を区別することば意味のあることである。しかし,自由刑のうち拘留については,罰金よりも軽い刑とみなされている上,実際に科される事例も少ないことから,以下においては,自由刑としては,懲役及び禁錮のみを考察の対象とする。
 ところで,これらの多数回前科者は,それぞれ懲役・禁錮の自由刑と罰金・科料の財産刑をどのような割合で重ねてきたのであろうか。前科10犯以上を有する者4万5,755人について見ると,懲役・禁錮の刑(以下「自由刑」という。)のみを重ねてきた者は3,531人,罰金・科料の刑(以下「財産刑」という。)のみを重ねてきた者は3,039人であるが,これらの者を両極端として,その中間には自由刑と財産刑を織り交ぜながら多数の前科を重ねてきた者が存在している。そこで,多数回前科者について,各犯数別に自由刑に処せられた回数別の人員を見るとIV-22表のとおりである。例えば,前科10犯の者1万3,030人について見ると,自由刑なしの者が1,035人,自由刑5回の者が1,455人,自由刑10回の者(財産刑なしの者)が1,148人となっているが,これによって自由刑と財産刑がどのような割合で科されてきたかを知ることができる。前科10犯から20犯くらいまでの者は,おおむね,その保有する全前科が自由刑である者から財産刑である者に至るまで,大体同じような人数で平均的に分布しているが,20犯を超えると,前科数が多くなるに従って財産刑の前科を多く保有する者の比率が高くなっていく。財産刑が半数以上の者の比率は,前科20犯ないし29犯では約58%,30犯ないし39犯では約77%,40犯以上では約93%となっており,特に前科60犯以上の者7人について見ると,自由刑なしの者が3人で,残りの4人も自由刑は2回ないし5回にすぎない。なお,自由刑の前科回数が最も多い者は,35回(前科36犯の者1人)で,30回以上の自由刑前科を有する者は合計7人である。
 このように,一概に多数回前科者とは言っても,これらの者は,主として自由刑の前科を重ねる者と主として財産刑の前科を重ねる者との二つに大きく分けることができるので,この両者を分けて,第4節においては主として自由刑の前科を重ねる者について,第5節においては主として財産刑の前科を重ねる者について,それぞれ分析することとする。

IV-22表 多数回前科者の犯数別に見た自由刑の回数別人員