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 昭和62年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節 

第2節 裁判における量刑

 国民は,量刑について,一般的に,どのような感触をもって受け止めているであろうか。この問題については,これまで,大方の関心を集めた重大事件の判決がなされたような場合は別として,国民の考え方がまとまった形で明らかにされたことはほとんどなかったと思われる。もっとも,一部の実務家や研究者からは,これまでも,時に応じて,様々な立場から,量刑についての見解がかなりの程度公にされてきているように見受けられる。すなわち,一方においては,量刑が寛刑化の傾向にあるのではないかということが従来からしばしば言われてきたほか,最近においては,地域間において量刑に較差があるのではないかとする指摘もなされているが,これらの指摘は,このような傾向があるとすれば,さほど長期間とも言えない程度の時間の経過により,あるいは必ずしも広いとは言えない国土内において単に地域を異にするというだけのことにより,例えば,被害者の立場に置かれた者の痛みや生命の価値について,評価が相違するような印象を与える量刑は,適正・妥当なものとは言えないのではないかとの問題提起を含むものと思われる。
 これに対し,他方においては,事件の個性を抜きにして量刑の軽重を論ずるのは適当とは思われず,仮に指摘されるような傾向があるとしても,もともと刑事司法の運用は,社会の進展に伴い,峻厳苛酷なものから,漸次,人道的なものへと移行していくのであるから,寛刑化傾向はむしろ当然のことであるとする考え方や,また,我が国土は広いとは言えないにせよ,地理的・歴史的・経済的・文化的諸条件において同一には論じられない多くの地域を擁しているのであるから,量刑にある程度の地域差があるのは当然で,これを殊更に問題とすることは適当でないとする見解もあり得よう。
 そこで,以下においては,まず,量刑について,その時代的変遷や地域間較差の有無を考える上での手掛かりとなり得る資料を披瀝し,次いで裁判における量刑についての国民の受け止め方を見ていくこととする。