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 昭和62年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/8 

8 不服申立制度

 収容されている者から苦情が申し立てられた場合,法令に基づき,これを適切かつ迅速に処理することは,行刑施設の運営上重要な事項の一つである。被収容者が施設の処置に対して不服があるときは,一般的な制度としての民事・行政訴訟,告訴・告発,人権侵犯申告等によることもできるが,現行監獄法令上の苦情処理制度である法務大臣又は巡閲官(法務大臣の命を受けて行刑施設に対する実地監査を行う法務省の職員)に対する情願を申し立て,又は行刑施設の長に対する面接(所長面接)を申し出ることもできる。情願は,大臣に対しては書面で,巡閲官に対しては書面又は口頭で行われるが,いずれも申立ての内容が事前に施設の職員に知得されないよう秘密の申立てが保障されている。情願の法的性格は,請願の一種とされ,申立てに対する回答の義務はないものと解されているが,行刑の実際においては,申立事項について十分な調査を行い,申立人に対し結果を通知するなど誠実な処理がなされている。また,所長面接も,代理者による実施を含め,活発に運用されている。

II-39表 被収容者の不服申立件数(昭和40年,50年,59年〜61年)

 II-39表は,昭和40年,50年及び59年以降におけるこれらの不服申立件数を見たものである。近年,各種の不服申立てが増加しているが,このことは,一般社会における権利意識の高まりを反映した被収容者の権利意識の増大,簡明な不服申立手続が保障されるようになったことなどによるものと解される。61年における不服申立ての総数は1,312件で,前年より479件減少しており,特に,訴訟及び告訴・告発の減少が顕著である。なお,この種の不服申立てで,その主張が終局的に関係機関によって認容された事例は,従来からほとんどない。