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 昭和62年版 犯罪白書 第1編/第2章/第8節/1 

第8節 高齢者の犯罪

1 概  説

 我が国の人口構成の高齢化には,著しいものがある。I-56表は,高齢者(通常65歳以上の者をいうことが多いが,本節では統計上の制約から60歳以上の者をいう。)の人口の推移を示したものであるが,高齢者数は,一貫して増加し続けており,昭和61年では総務庁の推定人口によると,1,860万人で,総人口に対する高齢者の比率(高齢者比)は,15.3%となっている。これを30年前の744万8,000人,8.3%に比べると,高齢者数で2.5倍,高齢者比で7.0ポイント増,10年前の1,355万人,12.0%に比べると,高齢者数で1.4倍,高齢者比で3.3ポイント増となっている。

I-56表 高齢者人口の推移(昭和31年,41年,51年,56年,61年)

 こうした人口構成の高齢化に対応して,近年,様々な分野において,定年年齢の引上げ,雇用の促進等をはじめとして,高齢者の能力に応じた就業を開拓したり,社会的活動に参加する機会を確保するための諸施策が進められており,総務庁統計局の「労働力調査年報」によると,60歳以上の高齢就業者数は,昭和61年の推計では588万人で,10年前の483万人に比べ1.2倍となっているほか,警察庁交通局の調査によると,60歳以上の運転免許保有者数も年々増加し,61年末現在では381万4,426人で,10年前の133万104人に比べ2.9倍となっているなど,高齢者が高齢であるということだけで社会から引退するようなことは,今後,ますます少なくなっていく状況が見受けられる。そこで,本節では,以下,高齢者による犯罪の動向と刑事手続及び処遇の各段階における高齢犯罪者に対する処遇の実情を,概観することとする。