(1) 少年院在院者の仮退院
少年院在院者の仮退院を決定する権限は,第2編第4章第1節で述べたとおり地方更生保護委員会に属するが,この仮退院が許されるのは,少年院在院者が矯正処遇の最高段階に達し,かつ,保護観察に付することが少年の改善更生のために相当であると認められたとき,又は,矯正処遇の最高段階に達していなくても,少年自身の努力により成績が向上し,かつ,保護観察に付することが少年の改善更生のために特に必要であると認められたときである。
仮退院の許否状況は,前掲II-42表のとおりで,昭和60年の許可人員が5,645人,棄却人員が1人となっているが,III-48表は,最近3年間の仮退院許可人員を,少年院における処遇区分別に見たものである。60年は,総数5,645人(前年比0.5%増)のうち,一般短期処遇が1,794人(同6.2%減),交通短期処遇が265人(同7.3%増),長期処遇が3,586人(同3.7%増)であり,長期処遇及び交通短期処遇が,いずれも前年に比べ若干増加している。
(2) 不定期刑受刑者の仮釈放
少年のとき不定期刑を言い渡された受刑者の仮釈放審理手続及び仮釈放許可基準は,定期刑受刑者の場合と同様であるが,ただ,仮釈放を許可することができる時期は,定期刑の場合と異なって,言い渡された刑期に長期と短期があることから,短期の3分の1を経過した後とされている。
III-48表 仮退院を許された者の少年院における処遇区分別人員
不定期刑受刑者の仮釈放許否状況は,前掲II-43表のとおりで,昭和60年の許可人員は84人,棄却人員は4人(棄却率4.5%)となっているが,最近3年間に仮釈放を許可された者について,短期経過前後における許可人員及び刑の執行率(執行すべき刑期のうち,現に執行された刑期の比率)を見ると,III-49表のとおりである。短期経過前に仮釈放を許可された者の比率は,従前,56年の21.8%から58年の37.2%まで上昇していたところ,最近2年間は続けて低下しており,59年は33.0%,60年は31.0%となっている。しかし,短期経過の前後にかかわりなく刑の長期の執行率を見ると,早期に仮釈放を許可される者の比率が高くなっており,例えば,刑の執行率の比較的低い60%未満では,58年が17.2%,59年が20.8%,60年が31.0%と年々上昇し,逆に刑の執行率の高い90%以上では,58年が10.3%,59年が7.5%,60年が4.8%と年々低下している。
III-49表 不定期刑仮釈放の短期経過前後における許可人員及び刑の執行率