最近3年間における少年院新収容者の処遇課程等別人員は，III-36表のとおりである。少年院に新たに収容された人員は，昭和50年以降，増加傾向を示していたが，60年には，前年より33人(0.5%)減少して6,029人となっている。これを処遇区分別に見ると，長期処遇は2.6%増の3,988人，一般短期処遇は7.8%減の1,761人，交通短期処遇は5.3%増の280人である。なお，総数の男女別では，男子は0.9%減，女子は2.3%増となっている。

III-36表　新収容者の処遇課程等別人員

　III-37表は，新収容者の年齢別人員を処遇区分別に見たものである。昭和60年における各年齢層別の構成比は，18歳以上の少年が前年より1.4ポイント増の42.7%(一般短期処遇40.5%，長期処遇43.0%)であるのに対して，中間少年では1.5ポイント増の40.3%(一般短期処遇42.1%，長期処遇39.1%)，年少少年では2.9ポイント減の17.0%(一般短期処遇17.4%，長期処遇17.9%)である。男女別では，年齢が低いほど女子比が大であること，総数に占める長期処遇の比率は，女子(66.7%)の方が男子(66.1%)よりやや高いことが分かる。

III-37表　新収容者の年齢別人員

III-38表　新収容者の非行名別人員

　III-38表は，新収容者の非行名別人員を処遇区分別に見たものである。
　昭和60年の総数を前年のそれと比べてみると，刑法犯，虞犯が増加し，特別法犯が減少している。すなわち，増加したものとしては公務執行妨害(94.1%増)，殺人(70.0%増)，放火(20.0%増)，業過(18.5%増)などであり，減少が目立つものは強盗(21.2%減)，暴行・凶器準備集合(17.1%減)，恐喝(10.8%減)，覚せい剤取締法違反(9.8%減)などである。
　処遇区分別では，一般短期処遇，長期処遇共に窃盗が最も多く，それぞれ40.0%，48.6%を占めており，第2位以下は，一般短期処遇では傷害，虞犯，覚せい剤取締法違反などの順，長期処遇では覚せい剤取締法違反，傷害，虞犯などの順となっている。なお，交通短期処遇では，86.8%が道路交通法違反及び業務上過失致死傷である。
　女子では，虞犯の比率が高く全体の31.5%を占めており，また，覚せい剤取締法違反(28.4%)が窃盗(18.1%)を上回り，しかも，ここ数年増加傾向にあることが注目される。
　昭和60年の新収容者の教育程度について見ると，高校在学・中退以上の者の占める比率は，交通短期処遇(58.6%)が最も高く，以下，一般短期処遇(36.7%)，長期処遇(23.3%)の順になっている。中学在学中の者は，長期処遇12.8%，一般短期処遇12.7%であり，男女別では，女子は，男子の10.4%に比べて，24.4%と高率である。
　III-12図は，新収容者の不良集団への加入歴を処遇区分別に示したものである。暴力組織への加入歴がある者の比率は，長期処遇で15.6%，一般短期処遇で5.1%，交通短期処遇で0.7%となっている。地域不良集団への加入歴がある者の比率は，一般短期処遇で最も高く26.0%，暴走族への加入歴がある者の比率は，交通短期処遇で著しく高く46.4%である。
　法務省矯正局が行った調査によって，昭和61年3月末現在の全少年院在院者4,492人の主な特性について，男女別，年齢層別に見ると，III-39表のとおりである。
　初発非行年齢について見ると，男子では年少少年の39.9%が12歳未満で既に非行歴を有しているのに対して，女子の年少少年では81.8%が12歳以降になって非行が始まっている。中間少年及び18歳以上の少年の場合も，女子は男子に比べて非行の始まりが遅い。

III-12図　新収容者の不良集団加入歴別構成比

　問題行動歴について見ると，男女別では，家出，怠学・登校拒否，有機溶剤濫用，覚せい剤濫用及び万引きについては女子が，対教師暴力，生徒間暴力などの暴力的非行については男子が高い比率を示している。また，年齢層別では，家出，怠学・登校拒否，対教師暴力及び万引きについては，年少少年が高い比率を示しているが，覚せい剤の濫用については，18歳以上の者の比率が高く，特に，女子の18歳以上では65.1%と著しく高い。
　家庭環境上の問題について見ると，問題を抱えた少年がかなり多いことが分かる。特に，女子では，各年齢層で父母間の不和・葛藤及び父母の離婚・別居が，いずれも50%を超えている。