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 昭和61年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/4 

4 収容鑑別対象少年の特性

 昭和60年に収容鑑別の対象となった少年について,幾つかの側面からその特性を見ると,次のとおりである。
(1) 非行と年齢層
 III-33表は,非行と年齢層との関係を見たものである。
 非行では,窃盗が36.5%と最も多く,以下,虞犯12.6%,道路交通法違反9.5%,傷害9.1%,覚せい剤取締法違反6.2%,毒物及び劇物取締法違反6.2%,恐喝5.0%などとなっている。
 年齢層は,年長少年(本節では20歳以上の者を含む。)が42.0%で最も多く,次いで,中間少年39.5%,年少少年(本節では14歳未満の者を含む。)18.5%の順であるが,男女別に見ると,男子では年長少年と中間少年が,女子では中間少年と年少少年が多くなっている。
 非行と年齢層の関係を男女別に見ると,男子では,いずれの年齢層においても窃盗が40%前後を占め,次いで,年少少年では虞犯及び傷害が,中間少年では道路交通法違反が,年長少年では道路交通法違反及び傷害がそれぞれ高率である。

III-33表 非行名・年齢層別構成比

 女子では,年少及び中間少年では虞犯がそれぞれ67.7%と45.5%,年長少年では覚せい剤取締法違反が42.0%を占めている。次いで,年少少年では窃盗,中間少年では覚せい剤取締法違反及び窃盗,年長少年では窃盗の占める比率が高くなっている。また,年長になるに従って窃盗の比率が少しずつ上昇し,覚せい剤取締法違反の比率は顕著に上昇している。
 なお,前年に比べると,非行の総数では殺人が増加し,強盗及び覚せい剤取締法違反が減少している。年齢層では男女共に中間少年が増加,年少少年及び年長少年は減少している。
(2) 非行時の前歴
 III-34表は,非行と非行時の前歴との関係を見たものである。非行時に保護処分等が継続していた者は39.4%を占めており,その大部分が保護観察である。また,非行との関係で見ると,毒物及び劇物取締法違反,詐欺,覚せい剤取締法違反,窃盗,恐喝において,保護処分等を受けていた者が多いことが分かる。
(3) 非行と入所回数
 III-35表は,非行と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。少年鑑別所に初めて入所した者が,68.8%を占めている。非行と入所回数との関係を見ると,再入者(2回以上の者)の割合が多いのは,薬物関係事犯及び財産犯であり,再入者の割合が最も少ないのは性犯罪である。
(4) 知能及び精神状況
 知能を,知能指数の判明した者( 2万1,523人)について見ると,知能指数59以下は1.2%,60〜69は4.4%,70〜79は20.4%,80〜89は25.4%,90〜99は27.1%,100〜109は14.9%,110〜119は4.8%,120以上は1.8%となっている。
 性格像を,法務省式人格目録(MJPI)の結果からタイプに分けて見ると,まず,男子については,「付和雷同・追従傾向が強く,軽率に行動しやすい」タイプ(IV型)の少年が,最も多くて全体の19.7%を占め,次に多いのが,「気が弱く,過敏で神経質な」タイプ(I型)の少年で,11.6%を占めている。そして,「自己中心的,むら気で,爆発的・衝動的な行動に走りやすい」タイプ(II型),「自分の弱点を隠し,表面的に他人とうまく接していこうとする」タイプ(V型),「偏執的で,疑い深く,ひがみっぽい」タイプ(III型)がそれぞれ6.2%,6.2%,1.9%である。女子では,IV型16.7%,I型14.6%,II型7.7%,V型4.6%,III型1.8%となっている。

III-34表 非行名・非行時の前歴別構成比

III-35表 非行名・入所回数別構成比

 精神診断の結果,精神障害の認められた者は総数の2.3%であり,その内訳は,精神薄弱1.3%,精神病質0.0%(10人),神経症0.1%,その他の精神障害0.9%となっている。
(5) 入所前の問題行動
 少年鑑別所入所前における問題行動を,男女別に見ると,性経験のある者は,男子が71.3%,女子が91.7%,家出歴のある者は,男子が51.9%,女子が86.9%,覚せい剤又は麻薬濫用歴のある者は,男子が7.9%,女子が25.9%,有機溶剤濫用歴のある者は,男子が60.7%,女子が73.5%,自動車の無免許運転歴のある者は,男子が75.2%,女子が34.9%となっており,自動車の無免許運転を除いては,全般的に,女子に入所前に問題行動のある者が多いことが分かる。なお,無免許運転歴のある者の比率は,男女共に逐年上昇している。