III-19表は,昭和50年及び58年以降における交通関係業過及び道交違反を除く少年被疑事件の検察庁新規受理人員の罪種別,年齢層別構成比を示したものである。新規受理人員は,近年増加傾向をたどっていたが,59年から減少し,60年には前年より1,757人(0.8%)減少して21万4,874人となっている。その内訳を見ると,刑法犯では,1,405人(0.7%)増加して18万9,220人,特別法犯では,3,162人(11.0%)減少して2万5,654人となっている。60年における罪種別内訳を見ると,刑法犯では,財産犯が16万6人で総数の74.5%を占めており,次いで,粗暴犯(脅迫を除く。)が1万9,496人で9.1%となっている。60年の年齢層別構成比を見ると,総数では,年少少年が43.1%で最も高く,以下,中間少年の37.7%,年長少年の19.2%の順となっている。年少少年は,60年は前年より1,312人(1.4%)減少したが,総数中に占める比率は依然第1位である。罪種別に見ると,粗暴犯,財産犯及びその他の刑法犯では年少少年が,特別法犯では中間少年が,また,凶悪犯では年長少年が,それぞれ最も高い比率を示している。年長少年で,総数中に占める比率の高い罪種は凶悪犯及び特別法犯であるが,後者の比率はおおむね下降傾向にある。
III-19表 検察庁新規受理犯罪少年の罪種・年齢層別構成比
成人を含めた検察庁の交通関係業過及び道交違反を除く新規受理人員中に占める少年被疑事件の比率を見ると,総数では昭和52年の24.1%から逐年上昇を続け,60年では42.0%となっている。罪種別に見ると,凶悪犯では15.4%(前年は16.6%),粗暴犯では35.6%(同35.4%),財産犯では60.0%(同58.8%),特別法犯では18.6%(同18.0%)となっている。
検察官は,少年被疑事件を家庭裁判所へ送致するときは,少年の処遇に関して意見を付することかできるが,昭和60年における業過,過失致死傷及び道路交通法違反を除く家庭裁判所終局処理人員について,検察官の処遇意見と家庭裁判所の処理結果とを罪種別,年齢層別に対比して見ると,III-20表のとおりである。検察官が付した刑事処分相当,少年院送致相当,保護観察相当の各意見の比率と家庭裁判所の各終局処理結果の比率を比べると,凶悪犯を除きすべての罪種及び年齢層において,家庭裁判所の終局処理結果は,検察官の付した意見の比率を下回っている。凶悪犯では,検察官の意見は検察官送致又は少年院送致の占める率が高いのに対して,家庭裁判所の終局処理結果はこれが比較的低く,また,その他の比率が他の罪種に比べて低率で,このため,保護観察の占める比率が高くなっている。
III-21表は,家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について,昭和60年における検察庁処理状況を罪名別に示したものである。起訴人員総数は,前年より2,009人減少して5万1,685人である。そのうち,98.9%に当たる5万1,131人は交通関係業過又は道交違反である。起訴のうち,5万672人(98.0%)は略式手続によって処理されており,公判請求された少年は1,013人(前年は1,143人)にとどまっている。公判請求率は2.0%で,前年の2.1%よりも若干低下している。公判請求人員のうちでは,交通関係業過が50.8%(前年は49.5%)と最も多く,以下,道交違反の12.0%(同12.9%),窃盗の9.5%(同10.6%),覚せい剤取締法違反の7.3%(同10.2%)の順となっている。なお,覚せい剤取締法違反で公判請求された人員は,53年(33人)以降57年(148人)までは逐年増加していたが,58年(126人),59年(117人),60年(74人)と連続して減少している。
III-20表 罪種・年齢層別検察官処遇意見及び家庭裁判所終局処理結果の構成比
III-21表 逆送少年の罪名別検察庁処理人員