日本人の出国者数は,法務省入国管理局の資料によれば,昭和40年代に入り急速に増加し,46年には外国人の入国者数を上回り,以後更に増加を続け,55年にいったん減少したものの,56年から再び増加に転じ,60年には494万8,366人(前年より28万9,533人,6.2%増)となっている。これを渡航先別に見ると,アメリカ合衆国が33.9%,アジア地域が48.6%を占め,前年とほぼ同様の傾向となっている。
I-69表 日本人の国外における犯罪の態様別通報受理件数
最近5年間の日本人の国外における犯罪について,外務省及び国際刑事警察機構等を通じて警察庁が通報を受理した件数は,I-69表のとおりである。通報受理件数は,昭和60年には,前年より6件(5.2%)減少して110件となっている。その内訳を見ると,関税・為替管理関係が38件で最も多く,次いで出入国管理関係の18件,麻薬・覚せい剤関係の16件である。上記60年の受理件数110件についてその犯罪地域を見ると,韓国が37件で最も多く,以下,アメリカ合衆国(21件),フィリピン(14件),カナダ(5件),イギリス(3件),ドイツ連邦共和国(3件),オーストラリア(3件),台湾(3件)などの順となっている(警察庁刑事局の資料による。)。
I-70表 日本人の国外における犯罪(人身)被害人員
次に,昭和58年から60年の3年間に,日本人が国外で被った犯罪被害のうち,直接人身に攻撃を加えられたもので,在外公館から外務省領事移住部に報告のあったものを見ると,I-70表のとおりである。被害人員は191人で,このうち,死亡が45人となっている。また,被害人員のうち,加害者が日本人であるものは10人である。これを罪名別に見ると,殺人34人,強盗123人,傷害19人,その他15人となっている。また,地域別に見ると,フィリピンが最も多く,次いでアメリカ合衆国となっている。フィリピンでは,58年に5人,59年に4人,60年に29人が被害を受けている。60年の事例を見ると,フィリピンでは日本人の観光客23人を乗せたバスが露店前で買物待ちのため停車中,ピストルを所持した男数人にバスに乗り込まれ現金等を強取される被害を受けたものである。