I-59表は,最近3年間に検察庁が受理した公務員(法令により公務に従事する者とみなされるいわゆる「みなす公務員」を除く。)による道交違反を除く犯罪を,罪名別に示したものである。昭和60年の受理人員総数は,前年より763人(3.7%)増加して2万1,332人となっている。罪名別の受理人員を見ると,業過が1万7,569人(総数の82.4%,刑法犯の83.9%)と圧倒的に多く,60年の検察庁における道交違反を除く新規受理人員総数に占める業過の割合(総数の51.5%,刑法犯の59.2%)と比較してみると,公務員の場合は,業過の占める割合が著しく高くなっている。職権濫用の受理人員も1,411人と多いが,そのほとんどは告訴・告発によるものである。60年における特別法犯の受理人員は401人で,前年より131人(24.6%)減少し,58年の半数以下になっている。従来,大規模な選挙が行われた年は,公職選挙法違反の受理人員が相当数に上っており,58年には統一地方選挙,参議院議員通常選挙及び衆議院議員総選挙が施行されて,公職選挙法違反の受理人員が増加したが,59年,60年には大規模な選挙が行われなかったために,特別法犯の受理人員が少なくなっているものと思われる。
I-59表 公務員犯罪の罪名別検察庁新規受理人員
I-60表は,最近3年間における道交違反を除く公務員犯罪の検察庁における終局処理状況を示したものである。昭和60年における起訴人員総数は,前年より180人増加して1万2,681人となっているが,起訴率は0.2ポイント下降して61.0%となっている。起訴率を罪名別に見ると,収賄の75.0%が最も高く,業過の68.3%がこれに次ぎ,従来と同様の傾向を示している。職権濫用の起訴は例年極めてまれであるが,60年においてはすべて不起訴とされている。これは,この種事件のほとんどが,警察,検察,裁判,矯正等の職員に対する告訴・告発事件であって,事実自体が犯罪とならないものや犯罪の嫌疑がないものなどであるためである。
I-60表 公務員犯罪の罪名別検察庁終局処理人員