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 昭和61年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節 

第3節 公害犯罪

 I-31表は,検察庁の最近3年間における公害犯罪の新規受理人員及び昭和60年の終局処理人員を罪名別に示したものである。60年の新規受理人員総数は,前年より26人(0.5%)減少して,5,682人となっている。これを罪名別に見ると,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)違反が3,631人(63.9%)で最も多く,以下,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(以下「海洋汚染防止法」という。)違反が1,254人(22.1%),水質汚濁防止法違反が489人(8.6%)となっており,この三者で全体の94.6%を占めている。なお,海洋汚染防止法違反にあっては,ここ数年増加を続けており,特に60年には,前年に比べて163人(14.9%)増と,際立った増加を示している点で注目される。

I-31表 公害犯罪の罪名別検察庁新規受理・終局処理人員

 次に,昭和60年の終局処理人員について見ると,総数では5,557人で前年より18人減少している。そのうち,起訴人員は,前年より42人増加して3,961人で,起訴率は72.2%である。なお,公判請求人員は27人で,起訴中の公判請求の比率は0.7%(前年は1.4%)となっている。
 次いで,起訴人員を罪名別に見ると,廃棄物処理法違反が2,602人(起訴率は74.4%)で最も多く,以下,海洋汚染防止法違反の799人(同66.1%),水質汚濁防止法違反の371人(同79.3%)などとなっている。
 さらに,これら三つの主要な公害犯罪について,検察統計年報により,その法人・個人別終局処理人員の比率を見ると,廃棄物処理法違反では,法人が10.8%に対し個人が89.2%を占め,海洋汚染防止法違反では,法人の16.5%に対して個人が83.5%,また,水質汚濁防止法違反では,法人の35.0%に対して個人が65.0%となっており,水質汚濁防止法違反は,他の二者に比べ,企業犯罪として行われる事案の多いことが窺える。