我が国における麻薬取締法，あへん法，大麻取締法の各違反を総合して，その検挙状況について見ると，前掲I-17表に示すとおりである。昭和60年においては，総数で検挙件数2,214件，検挙人員1,854人と，前年に比べて件数で75件(3.5%)，人員で134人(7.8%)それぞれ増加している。事犯別で特に注目されるのは，大麻取締法違反の動向であって，52年以降1,000人台の検挙人員が続いており，60年では，1,273人と，前年に比べて118人(8.5%)減少したものの，麻薬事犯全体の68.7%を占めている。
　I-24表は，最近5年間における麻薬等の押収量を示したものである。麻薬等の押収量は年による増減が著しいが，昭和60年における押収量について見ると，前年に比べ大麻やLSDが大幅に減少し，ヘロインが約2.4倍の増加となっている。
　麻薬事犯を，厚生省薬務局の資料によって違反法令別に見ると，次のとおりである。
　麻薬取締法違反については，前述のとおり昭和20年代から長期間にわたり増減を繰り返してきたが，38年の法改正による罰則の強化等の対策が功を奏し，それ以降激減した。56年以降における検挙人員は，おおむね100人前後で推移していたが，59年は132人となり，60年は，前年に比べて更に6人増加して138人となっている。違反態様別構成比では，60年において，所持，密輸入，譲渡・譲受の各事犯の順に多く，それぞれ40.6%，31.9%，20.3%となっている。使用事犯は各年次とも少なく，60年は4.3%である。密製造事犯は検挙される者がない年が多く，57年には4人が検挙されているが，60年は前年に引き続いて検挙された者はない。また，主な違反品目別の検挙人員は，ヘロイン事犯が71人，コカイン事犯が34人と，それぞれ前年に比べ41人，13人増加したが，LSD事犯は24人で前年に比べ46人と大幅に減少している。

I-24表　麻薬等の押収量

　あへん法違反の検挙人員は，昭和43年の1,148人を頂点として，その後，急速に減少し，45年以降は100人ないし200人台を上下していたが，58年に増加して408人となり，59年には197人に減少したものの，60年には再び増加し，前年に比べ246人(124.9%)増の443人となった。違反態様別に見ると，そのほとんどが，けしの観賞を目的とした栽培事犯であり，60年では97.7%(433人)を占めている。
　大麻取締法違反について見ると，検挙人員は，昭和55年の1,433人を最高に最近ではやや減少傾向を示しており，59年は，前年より160人増加して1,391人となったが，60年には，前年より118人減少して1,273人となっている。違反態様別の構成比では，60年において，所持，譲渡・譲受，密輸入の順に多く，それぞれ58.6%，22.2%，16.1%となっている。