I-63表は,検察,裁判,矯正の各刑事司法手続における前科者率について,これを男女別に対比して示したものである。
まず,起訴猶予者中の前科者率を見ると,刑法犯,特別法犯のいずれにおいても,女子の前科者率が著しく低くなっており,起訴された者の中の前科者率を見ても,女子は男子に比較して低い。これを罪名別に見ると,起訴猶予者及び起訴された者の両者において,女子の場合殺人の前科者率の低さが目立ち,他方,窃盗,覚せい剤取締法違反及び売春防止法違反のそれは,起訴の段階で高くなっている。次に,第一審有罪人員中の前科者率を見ると,刑法犯における男子の比率は65.3%であるのに対して,女子は28.7%と低く,罪名では殺人の低さが特徴的である。さらに,刑務所に収容された新受刑者の中の執行猶予以上の前科者の占める比率を見ると,刑法犯における女子の比率は62.2%,男子のそれは78.4%であって,前科者率は女子の方が低いが,その差は小さくなっている。女子犯罪者の中でも刑務所に収容された者は,殺人を除いてその前科を見るかぎり男子の場合とそれほどの違いのないものとなっている。
I-63表 司法処理及び矯正処遇の各段階における前科者率の比較(昭和58年)