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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第2章/第8節/3 

3 高齢犯罪者の処遇

 I-56表は,高齢犯罪者に対する各刑事処遇段階における処遇対象人員及び処遇の状況を見たものである。
 昭和59年において,検察庁が終局処理した刑法犯の起訴及び起訴猶予の人員(交通関係業過による者,法人及び男女別又は年齢不明の者を除く。)は17万4,859人であるが,このうち高齢者の占める比率は2.6%である。これを男女別によって見ると,男子は2.3%,女子は5.2%となっていて,女子の方が高齢者の占める率が高い。
 次に,起訴猶予率について見ると,総数の起訴猶予率が33.5%であるのに対し,高齢者は52.5%と高い比率を示す。これを男女別に見ると,男子では,総数が29.4%であるのに対して高齢者は45.9%であり,また,女子では,総数が70.2%であるのに対して高齢者は78.1%となっている。

I-55表 高齢犯罪者の刑法犯検挙人員の罪名別構成比(昭和59年)

 検察庁で起訴された者は裁判所において審理されるが,昭和58年に全国の地方裁判所及び簡易裁判所が公判の裁判手続によって処理した刑法犯有罪人員は5万52人で,このうち高齢者は1,081人で2.2%を占めている。高齢者の実数及び総数中に占める比率はいずれも近年増加しており,54年に比べると,実数にして232人,比率で0.5ポイントの増加が見られる。男女別に高齢者の占める比率を見ると,男子は4万7,821人中1,029人(2.2%),女子は2,231人中52人(2.3%)となっていて,女子の比率がわずかに高い。

I-56表 各処遇段階における高齢犯罪者数及び構成比(昭和59年)

 昭和59年の新受刑者について見ると,高齢の新受刑者は627人で,総数中に占める比率は2.0%である。高齢者の実数及び総数中に占める比率は,近年いずれも増加しており,55年に比べると,実数にして130人,比率にして0.2ポイントの増加となっている。男女別に高齢者比を見ると,男子は1.9%,女子は2.7%で,女子の比率が高いが,その実数は35人にすぎない。
 高齢受刑者に対しては,その身体的,精神的状況に応じた処遇が行われている。特に,年齢がおおむね60歳以上で,老衰現象が相当程度認められる者及び身体虚弱なため特別な処遇が必要と認められる者については,作業を軽減し,医療的配慮を加えるなどの措置がとられている。
 昭和59年中に保護観察所が新たに受理した保護観察対象者(仮出獄者及び保護観察付執行猶予者)について見ると,仮出獄者では,高齢者は341人で総数中に占める比率は1.8%であり,保護観察付執行猶予者では84人,1.1%となっている。高齢者の実数及び総数中に占める比率は,仮出獄者では近年いずれも増加を示し,55年に比べると,実数にして130人,比率にして0.4ポイント増加しているが,保護観察付執行猶予者ではいずれも横ばいの状態にある。
 このような高齢の保護観察対象者に対しては,保護観察所において,高齢者特有の個人的問題や保護環境面の障害等に応じて個別的あるいは集団的処遇が実施されており,必要に応じて,更生保護会に委託するほか,公共職業安定所や老人福祉機関等との連携のもとに,就労先の確保や福祉施設への入所等についての努力が払われている。