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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第2章/第8節/1 

第8節 高齢者犯罪

1 概  説

 人口構成の高齢化は先進諸国に共通して見られる現象であるが,特に,近年における我が国のそれは極めて顕著なものがあり,65歳以上の高齢者の数及び総人口中に占める割合は,I-54表に示すとおり,増加の一途をたどり,昭和59年10月1日現在では,1,195万6,000人,9.9%に達している。しかもこの傾向は,総務庁統計局及び厚生省人口問題研究所の資料によると,平均寿命の延長や出生率の減少等によって,今後も他国に例を見ない勢いで強まり,25年後の2010年ころには18.8%と世界最高に達し,最高水準としては,2020年の21.8%,実数にして2,795万人に及ぶものと予想されている。
 高齢者の急激な増加に伴い,高齢者世帯(男子65歳以上,女子60歳以上の者のみで構成するか,又は,これに18歳未満の者が加わった世帯をいう。)は,実数及び世帯総数に占める比率とも増加しており,厚生省の「厚生行政基礎調査報告」によると,昭和49年に推計152万世帯,4.6%であったものが,59年にはこれが302万1,000世帯,8.1%へと急増している。

I-54表 高齢者人口の推移(昭和30年,40年,50年,59年)

 このような人口構成の高齢化への対応として,近年,定年年齢の引上げ,雇用の促進等をはじめとして,高齢者の能力に応じた就業その他社会的活動に参与する機会を確保するための諸施策が進められており,高齢者と社会とのかかわりはますます拡大するものと思われる。ちなみに,総務庁統計局の「労働力調査年報」によると,65歳以上の就業者数は逐年増加し,昭和59年には55年の1.1倍,約290万人となっており,また,警察庁交通局の調査によると,65歳以上の運転免許保有者数及び運転免許保有者総数中に占める割合もともに増加していて,59年末現在で,146万9,286人,2.9%となっている。
 高齢者は,このように現代社会の重要な構成員となっており,その社会的役割は今後ますます高まっていくものと思われる。
 本節では,このような急激な高齢化現象の中で,高齢者の犯罪がどのような特徴を有し,また,高齢の犯罪者に対する処遇がどのような状況にあるか等について概観することとする。