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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/2 

2 暴力団関係者の検挙状況

 昭和31年以降における過失犯及び道交違反を除く暴力団関係者検挙人員の推移を見ると,I-11図のとおりである。暴力団関係者検挙人員は,44年に最低の3万8,180人となったものの,45年以降再び増加に転じ,48年に5万人を超え,最近は横ばい傾向で推移していたが,59年では,前年に比べ1,476人増加し,4万9,519人となっている。これを罪名別の構成比で見ると,最も高いのは覚せい剤取締法違反の22.9%,次いで,傷害16.8%,恐喝9.1%,賭博8.7%,暴行7.0%の順となっている。

Iー11図 暴力団関係者検挙人員の推移(昭和31年〜59年)

 I-20表は,最近5年間における暴力団関係者の過失犯を除く刑法犯の検挙人員及び全検挙人員中に占める比率を,罪名別に見たものである。昭和59年における暴力団関係者の検挙人員は,2万9,859人で,前年に比べ224人増加している。罪名別に見ると,前年に比べ増加したのは,恐喝(406人,9.9%),傷害(320人,4.0%),詐欺(268人,20.7%),窃盗(143人,5.8%),器物損壊(117人,20.1%)などであるが,逆に,前年に比べ減少したのは,賭博(952人,18.2%),殺人(61人,10.6%)などである。59年における全検挙人員中に占める暴力団関係者の比率は,前年より0.1ポイント減であるが,罪名によっては増加しているものもある。これを罪名別で見ると,賭博のほか,脅迫,器物損壊,凶器準備集合,恐喝などの比率は前年より上昇している。また,脅迫(63.9%),賭博(43.5%),恐喝(38.0%),殺人(28.9%)などは暴力団関係者の占める比率が高く,これらはいずれも暴力団との結び付きが特に強い犯罪であるといえよう。

I-20表 暴力団関係者の刑法犯罪名別検挙人員及び全検挙人員中に占める比率(昭和55年〜59年)

I-21表 暴力団関係者の特別法犯罪名別検挙人員及び全送致人員中に占める比率(昭和55年〜59年)

 I-21表は,最近5年間における暴力団関係者の道交違反を除く特別法犯の検挙人員及び全送致人員中に占める比率を罪名別に見たものである。
 暴力団関係者の検挙人員は,昭和59年では,前年に比べ1,252人増加し,1万9,660人となっている。罪名別に見ると,前年に比べ増加したものは,覚せい剤取締法違反(684人,6.4%),職業安定法違反(81人,147.3%),売春防止法違反(67人,19.9%),児童福祉法違反(16人,3.8%)である。なお,年々増加を続けていた覚せい剤取締法違反については,58年は,初めて57年に比べて428人減(3.9%)となったが,59年は逆に,前年に比べて684人増の1万1,352人と,過去最高となっている。前年に比べ減少したのは,自転車競技法違反(177人,22.2%),銃砲刀剣類所持等取締法違反(140人,8.3%),競馬法違反(58人,3.4%)などである。
 昭和59年の全送致人員中に占める暴力団関係者の比率を見ると,総数では,12.6%と前年より1.3ポイント上昇しており,罪名別では,職業安定法違反,自転車競技法違反,覚せい剤取締法違反などが上昇している。なお,競馬法違反(50.9%),自転車競技法違反(48.6%),覚せい剤取締法違反(47.3%)などは,特に暴力団関係者の占める比率が高く,暴力団と結び付きの強い犯罪であることを示している。