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 昭和59年版 犯罪白書 第4編/第1章/第2節/6 

6 家庭と非行

 家庭は,少年の成長と教育にとって基本的な環境であり,少年非行との関連が古くから着目されてきた。
 非行少年の家庭の保護者及び経済状況については,前掲II-5表及びII-6表で見たとおり,8割弱が実父母がそろい,9割弱が経済的に普通以上の家庭の少年となっている。このように,最近における非行少年は,いわば一般家庭の子弟が大半を占めており,非行の一般化という現代型非行の特質を示している。

IV-11表 非行少年再犯者の前回処分別刑法犯検挙人員(昭和54年〜58年)

IV-12表 前回処分後の再犯期間の推移(昭和54年〜58年)

 IV-5図は,非行少年の保護者の養育態度を見たものである。昭和58年において,保護者の指導に何らかの問題のあった少年は総数の85.3%に達するが,そのうち,大多数を占めるのは放任であり,溺愛・過保護及び厳格・過干渉がこれに次いでいる。このような最近の家庭の指導状況から見て,両親の健在や経済生活の安定など形式的要件を具備しているものの,子女に対する基本的な保護的・教育的機能の低下している家庭が少なくなく,これが少年非行を生む家庭内の問題と関連しているものと思われる。

IV-5図 保護者の養育態度別構成比(昭和58年)

IV-6図 家庭内暴力少年の学職別構成比(昭和58年)

IV-7図 家庭内暴力の対象別構成比(昭和58年)

 さらに,最近,少年非行と家庭との関係で特に注目される現象は,家庭を犯罪の場とする家庭内暴力の多発である。
 IV-6図及びIV-7図は,昭和58年中に,少年相談や少年の補導活動を通じて警察が把握した家庭内暴力少年1,397人について,学職別構成比及び暴力の対象別構成比を見たものである。学職別では,中学生が最も多く,総数の4割を超えている。暴力の対象別では,母親が59.7%で最も多く,以下,物(家財道具等)が16.6%,父親が13.0%などの順となっている。