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 昭和59年版 犯罪白書 第2編/第4章/第4節/2 

2 交通事故被害

 高齢者の交通事故被害の状況を,交通事故死及び負傷について検討する。
 II-70表は,最近5年間における高齢者の交通事故被害(道路交通法に規定する車両による死亡・負傷)の人員及び発生率の推移を総数との対比で示したものである。死亡者については,高齢者の死亡人員は漸増傾向にあって,昭和58年には54年の1.2倍の2,399人となり,死亡者総数中に占める比率は25.2%である。交通事故による死亡者発生率は,総数,高齢者とも最近増加傾向を示し,58年にはそれぞれ8.0及び14.5となり,高齢者は総数に比べて比率が極めて高い。
 他方,負傷者については,高齢者の負傷人員は逐年増加して昭和58年には5万4,170人となり,負傷者総数中に占める比率は8.3%となっている。交通事故による高齢者の負傷者発生率は,減少傾向をたどっていたが,57年に引き続き58年も増加して327.2となったものの,なお,総数の548.0に比べて低い。

II-70表 高齢者の交通事故死・負傷者数及び発生率(昭和54年〜58年)

 以上の結果から,高齢者は,交通事故死及び負傷を合わせて見ると,一般に,被害に遭う率は低いが,いったん被害に遭うと死に直結する可能性が高いことが分かる。
 これまでに見てきた高齢者の犯罪被害等から,強盗,詐欺等の犯罪被害件数中に占める高齢者のそれの比率が高く,しかも上昇傾向にあることや,交通事故による高齢者の死亡,負傷が増加する傾向にあり,かつ,その死亡発生率が極めて高いこと等が明らかになったが,これらは,高齢者のための保護的措置や生活環境の整備等が,今後一層充実強化される必要のあることを示唆しているように思われる。