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 昭和59年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/4 

4 更生保護

 II-68表は,保護観察新規受理人員(仮出獄者及び保護観察付執行猶予者)中の高齢者数の最近5年間における推移を,総数との対比で見たものである。仮出獄者については,高齢者数は逐年増加し,昭和58年には297人となり,総数中に占める比率は1.8%になっている。一方,保護観察付執行猶予者については,高齢者数及び総数中に占める比率は,おおむね横ばい傾向を示していて,58年には72人(0.9%)となっている。

II-68表 保護観察新規受理人員中の高齢者数及び構成比(昭和54年〜58年)

 次に,昭和58年の保護観察新規受理人員について刑務所入所歴を見ると(不明の者を除く。),仮出獄者で入所歴2度以上の者は,総数が1万6,830人中7,694人(45.7%)であるのに対し高齢者は296人中200人(67.6%)であり,また,保護観察付執行猶予者で入所経験のある者は,総数が7,727人中651人(8.4%)であるのに対し高齢者は72人中35人(48.6%)となっていて,いずれも高齢者の率が高い。
 さらに,昭和58年中に全国の刑務所を出所した受刑者(総数3万1,446人,うち,高齢者649人)について出所時の帰住先を見ると,帰住先が父母・配偶者・その他の親族等の住居である者が,総数では64,1%であるのに対し高齢者では38.7%と低く,反対に,更生保護会及び福祉施設である者が,総数では19.8%及び0.3%であるのに対し高齢者では35.3%及び0.8%となっていて,高齢者は,親族等の協力が得られず更生保護会を帰住先とする割合の極めて高いことが分かる。
 このような保護観察対象者,満期出所者等に対しては,保護観察や更生緊急保護において,高齢者特有の個人的問題及び保護環境面の障害等に応じた個別的あるいは集団的処遇が実施されており,また,必要に応じて,職業安定所や老人福祉機関等と連携して,就労や福祉施設入所等について努力が払われている。
 以上,高齢者犯罪に関する検討から分かるように,近年,高齢者による犯罪が増加しており,その犯罪のほとんどは,万引き,自転車盗を中心とする比較的軽微な窃盗である。また,殺人,放火等の重大犯罪において,高齢者は,その実人員は少ないが,各罪名中に占める比率が総数に比べて高い。これら高齢犯罪者に対しては,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階において,その身体的・精神的状況に応じ,適切な処遇が行われている。しかし,高齢者の中には,刑務所入所歴のある者,しかも,その入所回数の多い者が数多く含まれており,加えて,保護環境に問題を有する者も多く,これら高齢犯罪者の社会復帰や保護のための施策は,今後ますます重要性を加えてくるものと思われる。