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 昭和59年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/1 

1 交通事故偽装の保険金詐欺

 調査資料に表れたこの種事件は,事件数にして264件,延べ被告人数で661人となっている。事件数に比べて被告人数が多いのは,事件の性質上共犯により敢行されることが多いためで,共犯事件数は229件と総事件数の86.7%に上っている。
 また,他の保険金目的の犯罪に比べて特徴的な点は,被害者となる保険者数(保険会社や共済組合)が多いことで,総事件数264件に対して542者を数えており,1件当たり平均2者となっている。これは,自動車保険がいわゆる強制保険と任意保険の2本建てになっていることや,自動車保険以外の傷害保険等も詐欺の対象とされることによるものである。
 事故の偽装方法としては,実際に加害用車両と被害用車両を用意して,追突型の物損を生じさせた上,いわゆるむちうち症等の傷害を受けたとするものが最も多く,物損だけの偽装は極めてわずかである。特異なものとしては,保険代理商も兼ねる自動車修理業者が,多数回にわたって,たまたま同じ時期に修理に持ち込まれた何の関係もない2台の自動車について,相互に衝突したように装って保険金を騙取していた事例がある。

II-7図 保険金目的の殺人事件における主犯者と被害者の関係